改めて問う! バス会社はなぜ社員のドライバーを守らず、「乗客クレーム」に加担するのか?
バス運転手が抱える重大ストレス
路線バスで事故が発生した場合、一般的な流れはまず警察やバス会社が事故調査を行うことだ。その結果、最終的には車両に乗っていたドライバーに責任が向けられることが多い。 路線バスでは、急発進や急ブレーキによるけがの治療費が問題になることがよくあるが、基本的にはドライバーやバス会社に対して請求ができる。ただし、バス会社は通常保険に加入しているため、実際にはバス会社が保険会社に請求することになる。 乗客のけがの治療が終わった後(後遺症をもたらす場合は後遺障がい認定が行われた後)、賠償金が算定されて乗客側に支払われる。一方、事故の程度によってはドライバーにペナルティーが課せられることもある。ペナルティーの種類は軽いものから順に、口頭注意、配置転換、減給、停職、解雇などが一般的だ。 最近では、ドライバーが事故防止の観点から 「停車までそのまま座っていてください」 「すぐに空いている座席に座ってください。座った後に発車します」 といったアナウンスを行う機会が増えている。しかし、こうしたアナウンスがあっても、乗客がけがをした場合にはドライバーの責任が完全に免除されることはなく、通常は責任を問われてしまう。また、他の労働者の目もあり、 「ペナルティーのうわさ」 が広まることで、ドライバーが働きにくくなることも少なくない。 同様の状況は鉄道業界やタクシー業界でも見られる。どんなに気を使って運転していても、事故が起きれば責任論につながり、大きなストレスとなることが多い。
ドライバー保護が急務
路線バスの乗客に関する事故が発生した場合、賠償金の支払いと該当ドライバーへのペナルティーが必要になる。事故にはやむを得ないケースも多いが、カスハラのような事例が増えている現状では、ドライバーのストレスを少しでも軽減することが重要だ。 秋田県能代市で路線バスや観光バスを運行している第一観光バスは、 「社員を守ることも大切」 「お客様と社員は対等の立場であるべき」 といったメッセージを広めており、注目を集めている。人手不足が背景にあるが、ドライバーも同じ人間として乗客と対等に守られるべきだという考え方は、多くの共感を呼んでいる。ドライバーをトラブルから守ることは 「バス事業者の責任」 であるという姿勢が、多くの支持を得ている。事故時にドライバーを保護する対策や、苦情対応における公平性(乗客だけに肩入れしない姿勢)を示すことで、ドライバーが安心して長く働ける環境が整うだろう。 また、ドライバーを希望する人々にも、こうした保護姿勢に関心を持ち、 「明確な回答を得られない事業者を選ばない」 という雰囲気が生まれることを期待したい。