レオス・キャピタルワークス藤野英人「若い頃に『根源的な好き』を見つけることが大事」
本当に「好き」を見つけるために
藤野の今の目標は、投資や資産形成について日本人の意識を変え、その位置づけを引き上げることだ。政府が「資産運用立国」を掲げ、投資で得られる利益や配当に税金がかからない新NISA(少額投資非課税制度)といった制度を用意したことで、投資に対する関心は以前よりも高くなっている。 しかし、藤野の目には依然として「お金儲け=悪」「投資=悪」といった考えを持つ人は少なくないように映る。 こうした日本の現実や意識を変えることが原動力のひとつになっていると話す。 「僕が本当にやりたいことは、投資の普及です。金融の良さやすばらしさを日本の隅々まで伝えたいし、お届けしたい。『ひふみ』シリーズをはじめとする投資信託の運用はもちろん、本を書いたり、YouTubeで動画を発信したりするのもその一環です。100万人以上のお客様がいて、1兆円以上のお金を任せてもらっていますが、それぞれ10倍くらいになったら一定の影響力が出てきたなと思えるようになるんじゃないでしょうか。その余地は十分にあると考えています」 目標や夢の実現に向かって走り続ける藤野は、若い世代に向けて、まずは「自分の『好き』を発見することが大事」だと呼びかける。 「自分にとって何をするとワクワクするか。根源的な自分の『好き』を見つけることがすべてではないでしょうか。『何が』とは、職業や科目といったものではありません。スペックだとか、『こうすると有利だ』みたいな一般的に言われていることに自分を合わせようとするのも違います。成功する人は、自分にとって本質的な『好き』を見つけて、それに合うことをしているように感じます」 しかし、本当の自分を知るのは難しいものだ。自分のことを完全に客観的にみることは不可能だし、置かれた環境や、まわりにいる人の評価や意見にも左右されやすい。藤野は「本当の『好き』を見つけるには、ある程度の行動の量が必要」と指摘する。 「行動してみると、思いもかけないようなことが好きなことに気づいたりするものです。でも、実際に動いてみなければ分からない。ですから、いろいろなことにチャレンジすることが大事です。特に若い頃にすることが重要だと思います」 藤野自身は「育つものを見ること」が好きだという。この「好き」は、運用会社やベンチャーキャピタルを通じて企業に投資したり、金融商品の提供を通じて顧客の資産形成を支援したりすることにも通じるという。 実はそのことに気づいたのは10年前にすぎないそうだ。なかなか見つからなくても、焦る必要はない。
Forbes JAPAN 編集部