レオス・キャピタルワークス藤野英人「若い頃に『根源的な好き』を見つけることが大事」
「起業家として生きる」を規定した10年
「中堅・中小企業の経営者の話を聞くうちに、起業家とサラリーマンにはどんな違いがあるのかと考えるようになりました。起業家の世界とサラリーマンの世界が一本の川で隔たれているのだとしたら、起業家に共通するのは、みんな起業家の世界に向かって向こう岸にジャンプしたということ。だから少なくてもジャンプしないといけないと考えました」 藤野が起業を決めたのは「30歳になる手前頃だった」と振り返る。具体的にどうやって起業すればよいかを考えた時、参考になったのはやはり、中小企業の経営者の経験や生き方だった。 藤野のもとを訪れる経営者は、ひとクセも、ふたクセもある人ばかり。当時は起業をする若い世代は今よりも少なく、面会するのは50~60代の経験豊富な中高年世代が多かった。どの経営者も藤野から投資資金を引き出すために必死で、彼らとの交渉や取引は真剣勝負の場になった。 「僕からお金を引き出そうとテーブルをたたいたり、大きな声を出したりする人もいました。ただ、そういった手練手管をろうしたりしますが、装飾やウソのない本気の世界です。真剣勝負を通じて、彼らの話し方や、交渉や取引の技術を吸収できた気がします」 資産運用の世界で起業を決めたのも、彼らの背中から学んだことが大きい。 「彼らのほとんどは、何らかの人生や背景のもと、たまたま出会った場所で起業しています。もちろん、どんなビジネスを手がければうまくいくかをあらかじめ考えてから起業する人もいます。でも多くは、『たまたま』です。僕自身も、たまたま出会った資産運用の世界で起業するというのがしっくりするだろうと思ったのです」 とはいえ資産運用会社を起業するためには、規制や経験、資金力などクリアすべき壁は少なくない。起業しようと決めてから、2003年にレオス・キャピタルワークスを立ち上げるまで6年余りかかったのは、そうした課題を乗り越えるため「武者修行」に出る必要があると考えたためだ。この間、実力がより重視されるジャーディン・フレミング(現JPモルガン・アセット・マネジメント)、ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントの外資系2社で修業を積んだ。 「僕の『U30』(30歳以下)の歩みは、起業家として生きることを規定した10年間だったように思います」