「未来都市シブヤ_エフェメラを誘発する装置」展(GYRE GALLERY)開幕レポート
大規模再開発が進む東京・渋谷。都市を変えることの意味や失われるものにフォーカスし、作品を通して問題提起する展覧会「未来都市シブヤ_エフェメラを誘発する装置」が、表参道のGYRE GALLERYで始まった。会期は11月29日まで。 本展タイトルにある「エフェメラ」とは、もともとグリーティングカードやチラシなど、役目を終えたら捨てられる短命の印刷物を指すもの。本展でのエフェメラは、短期間現れる仮設の装置やインスタレーションを指しており、「都市が経済成長だけではなく、社会の多様性と寛容性を育む空間を確保すること」を意味しているという。 企画は飯田高誉(スクールデレック芸術社会学研究所所長)、出展作家は、操上和美、山口はるみ、畠山直哉、風間サチコ、石川直樹、友沢こたお。とくに注目すべき作品を紹介したい。 ヒマラヤ山脈の8000メートル峰・シシャパンマに登頂し、世界の8000メートル峰全14座を制覇する快挙を成し遂げた石川直樹。本展では、コロナ禍で海外に出かけられないなか、「写ルンです」で撮影した地元・渋谷の写真群で構成した《STREETS ARE MINE》(2022)を展示。刻々と変わる渋谷の風景を、当時大繁殖していたネズミたちの姿とともに見せる。 渋谷・UPLINKでの展覧会「ガングロ牧場」(2018)で最初に作品を発表した経緯を持つ友沢こたおは、スライム状の物質と有機的なモチーフが絡み合う独特な人物画の作品で近年、評価を高めている。本展では、スライムが顔に接着する瞬間を描いた新作《slime CCIV》(2024)をはじめとする4点を展示。 畠山直哉の《アンダーグラウンド》(1999/2001)に写るのは、暗渠となっている渋谷川の地下洞窟だ。普段は隠された都市の水脈が、汚水が流れているとは思えない幻想的な姿となって切り取られている。 風間サチコの大作《人外交差点》(2013)は、テレビニュースのライブカメラなどで「日本一見られている場所」であろう渋谷スクランブル交差点を描いたもの。東日本大震災の発生後に描かれた本作には、過去のニュースや出来事、歴史的な事象から「相互監視」の世界を描くのに必要な要素が組み込まれた。非常時の体制によって市民が簡単に他人を監視する「警察官」になってしまう状況が示されている。