首都の通勤線「廃止」フィリピン国鉄の残念な現状 政府に見放され、新路線建設へ用地明け渡し
フィリピン政府側からの要請があってこその借款契約であり、最大の問題はフィリピン側に鉄道を生かす意思がなかったという点であろう。しかし、日本の開発援助は「自転車の補助輪を外す作業」と例えられることがある。この結果からすると、日本側にも責任があるといえる。 さて、NSCRはPNRの所有にはなるが、運輸省は運営を民間会社に委託することも予定している。冒頭のJR東日本の動きも、これをにらんだものである。現状のPNRには任せられないというのは正直なところだろう。しかし、前述の通り大規模な新線であるNSCRを満足にオペレーションするには、相当数の高度な鉄道人材が必要で、単に民間会社に丸投げすれば解決という話ではない。
この点、NSCRに関わるインフラ側の2つの事業と並行して、JICAの技術協力「フィリピン鉄道訓練センター設立・運営能力強化支援プロジェクト」が進行中だ。過去と同じ轍を踏まないためにも、これは非常に重要なプロジェクトである。この件に関しては、また稿を改めて紹介したい。
高木 聡 :アジアン鉄道ライター