「なぜ人は貯金できないのか」──40億円調達のスマートバンクが仕掛ける“家計改善”の全体像
AI搭載で家計改善を自動化
家計簿アプリとされるサービスは、App Storeで検索すると30以上がヒットする。にもかかわらず、家計改善は進まないと堀井CEO。「家計管理をやっている人が対象の調査でも、1世帯あたり月8691円、年間約10万円の浪費があった」という。日本全体では5兆円規模の無駄遣いが発生している計算だ。 同社のユーザーインタビューで見えてきた課題は明確だった。データは見えるようになったものの、改善方法が分からない。分析した結果、どうすればいいのかという「How」の部分が、ユーザーには見えてこないという。 この課題を解決するため、同社はAIを活用した家計改善アシスタントの開発を進めている。第1段階として、AIがユーザーの家計データを分析する。単に今月の支出を円グラフで示すだけでなく、過去の履歴との比較、同じような世帯構成の利用者との比較など、多角的な分析を行う。「ユーザーが気づいていなかった視点を提供したい」と堀井CEO。 第2段階は予算の提案だ。家計管理の出発点となる予算設定は、多くのユーザーが悩むポイントという。AIは分析結果を基に、その家庭の状況に合わせた予算配分を提案。他の世帯との比較も交えながら、実現可能な予算案を示す。 最後は実行のサポートだ。ここで同社の強みが生きる。既存の家計簿アプリが情報を預かるだけなのに対し、B/43は実際にお金を預かることができる。例えば、AIが提案した予算に基づき、銀行口座から自動的に生活費をチャージしたり、使い過ぎを防ぐため、カテゴリーごとの予算上限を設定し、超過を防いだりすることも可能だ。 通常の家計簿アプリは支出を記録し、予算オーバーを警告することしかできない。一方、B/43はお金を預かることで、そもそも予算超過を起こさせない仕組みを実現するという。 こうしたアプローチは、海外ですでに成果を上げ始めている。米国では大手金融機関JPモルガンが、AIを活用した資産形成アドバイスサービス「ウェルス・プラン」を展開。リリースから1年で1000万人が利用するまでに成長した。英国のフィンテック企業Cleoは、Z世代向けにチャットベースの支出管理サービスを提供し、黒字化を達成している。