（写真：ダ・ヴィンチWeb）

　結婚相談所に通い始めて1年。そろそろ心が折れそうな中年サラリーマンと異色のお見合い相手との交流を描いた『お見合いにすごいコミュ症が来た』（矢野としたか/KADOKAWA）は、笑いと恋愛要素が絶妙にブレンドされた新感覚ラブコメである。 【漫画】本編を読む

　婚活に苦戦する主人公・伊丹。職場の部下である園田から友人を紹介してもらえることになり、難航していた婚活に光明が見え始める。待ち合わせ場所に現れたのは、まさかの虚無僧姿をした超がつくコミュ症、野田さん。意外すぎる外見ながら、共通点も多く話が盛り上がる2人。デートを重ねる2人だったが、野田さんにはある秘密があった。実はコミュ症ゆえに別人のフリをして現れた園田だったのだ。バレそうでバレない!? そんな2人のお見合いラブコメが描かれる。 　虚無僧姿の野田さんに、「暑くない？」「ドレスコードは平気？」と伊丹が心の中でツッコむシーンには思わず笑ってしまう。また、園田の可愛らしい赤面ツッコミや徹底的なツンデレぶり、徐々にエスカレートしていく妄想シーンなど、随所に鏤められたギャグ要素が作品に彩りを添えている。 　物語は笑いだけではなく、互いを理解し、受け入れていく過程が細かに描かれ、恋愛ストーリーとしても楽しめる内容となっている。顔が見えないことをプラスに捉え受け入れる伊丹だが、やはり顔は気になる。対して園田は、自分の正体がバレてしまうかもしれない不安と、一緒にいる時間が増えるほど強くなる想いに揺れる。バレそうでバレない展開と心の距離の変化がハラハラを誘う。さらに新キャラクターの登場など、新たな展開を見せる2巻も見逃せない。 　本作は、笑いとドキドキが絶妙なバランスで描かれ、既存のラブコメでは物足りなさを感じている人におすすめの一作である。コミカルでありながら心温まる展開、そして予測不能な面白さは、新しい形のラブコメとして読者の心を掴むことだろう。 文＝ネゴト / Ato Hiromi