「唐揚げ」 ではなく「空上げ」、 愛知県の小牧市が 「航空自衛隊の名物料理」で狙う町おこし、「海自カレー」「ミリメシ」を超えられるか
■名古屋コーチンとのコラボを模索 昨年6月、小牧基地内で甘辛スパイシー米粉空上げの試食・意見交換会が行われた。小牧商工会議所の呼びかけにより集まったのは、市内の名古屋コーチン料理専門店や食品加工会社、養鶏業者など6社。 あまり知られていないが、小牧市は名古屋コーチンと深い関わりがある。明治初期、維新によって職も身分も失った元尾張藩士の海部壮平・正秀兄弟が成鶏を飼い始めた地が東春日井郡池林村(現在の小牧市池之内)で、掛け合わせを何年も続けた末に地鶏と中国生まれの鶏、バフコーチンの掛け合わせによって名古屋コーチンが生まれた。つまり、小牧市は名古屋コーチンの発祥地なのだ。
小牧商工会議所は名古屋コーチンの普及に向けた取り組みも積極的に行っているため、当初は小牧基地の空自空上げを名古屋コーチンで作ることができないかと考えていた。 「試食会はおおむね好評でしたが、商品化するとなると、高級食材ゆえにどうしても価格がネックとなって、誰でも気軽に食べられるというわけにはいかなくなります。空自空上げと名古屋コーチンのそれぞれにブランド力があるので、別々で取り組んでいこうという結論に至りました」(三輪さん)
■リピーター続出のホテルランチ 早々に仕切り直しとなったが、小牧商工会議所は小牧基地から甘辛スパイシー米粉空上げのレシピを提供してもらい、メニューとして販売する店を募集した。そこで名乗りを上げたのは、市内の喫茶店とホテル、食品加工会社。それぞれレシピを基に何度も試作を重ねて、昨年8月に行われた認定式で小牧基地から認定証が贈られた。 商工会議所の呼びかけにより3軒の認定店からスタートし、現在10軒まで増え、問い合わせも数多くさらに拡大中である。
認定店の一つで、名鉄小牧駅前にある「名鉄小牧ホテル」へ向かった。 「出張で来られるお客様が多いので、朝食ビュッフェで提供すれば全国にPRできると考えました。評判は上々で、現在は朝食ビュッフェのほか、ホテル内のレストラン「日本料理 有楽」のランチで提供していますが、地元のリピーターのお客様も大勢いらっしゃいます」と、支配人の大原隆一さん。 それが「小牧航空自衛隊『空上げ』御膳」。大ぶりな唐揚げ4個にサラダと茶碗蒸し、ご飯、赤だし、香の物、デザートが付くボリューム満点の御膳である。肝心な味だが、米粉を使っているので表面はカリッと、中身はもっちりとした独特の食感。とろみのある甘辛いタレもご飯がすすむ。そのまま食べても十分美味しいが、添えられた柚子塩を付けると、さっぱりとした味わいになる。