学校のクラスの治安が悪く、精神に不調を抱えてしまったという14歳女性に、鴻上尚史が語った「苦しみへの踏ん張り方」の真意とは
手紙をつけます。 「私のクラス、×年×組は今、こういう状態です。でも、担任の先生はちゃんと注意してくれません。私は、クラスがつらくて、ストレスがたまり、体調不良になりました。いつも夜になると死にたくなったり、泣きたくなったりの精神の病にかかっているような気持ちになります。校長先生、どうかクラスの現状をなんとかして下さい」と書きます。 続けて「校長先生に送るか、市の(または町の、村の、区の)教育委員会に送るか迷ったのですが、まず、校長先生に送ります。校長先生、助けて下さい」 これでしばらく様子を見ましょう。 その間に、このレポートを親に見せます。(複数、印刷する必要がありますね) 今、私のクラスはこんな状態なんだ、だから私は体調不良になったんだ、学校に行くのが本当につらいんだと、レポートを見せながら、ちゃんと伝えるのです。 親が納得しなかったら、過去にあったことも書き出して伝えましょう。こいうことがあったから、私は学校を休んだんだ、ズル休みじゃないんだと伝えるのです。 書き出すことが大切ですよ。口で言おうとしたら、興奮して、うまく言えなくなることが多いですからね。ちゃんと書いて、プリントアウトして見せるのです。 「過去にクラスであったリスト」は、校長先生には、効果がない可能性があります。担任の先生が「以前はそうですが、今はもう違います」と答えるかもしれないからです。 ですから、このリストを見せるのは親です。とにかく、親に、椿さんの現状を知ってもらうのです。 そして、体調が悪いから休んでいるわけで、ズル休みじゃないと受け入れてもらいましょう。もし、親が興奮して「これは学校に文句を言わないと」と言ったら、「今、校長先生にお願いしているからしばらく待って」と伝えましょう。
もし、親が「こんなレポートは嘘だ。お前は嘘をついている」と言ったら、「負けないぞモード」を強化します。「じゃあ、一緒に精神科の病院に行って、お医者さんの話を並んで聞いてほしい」とか「私のクラスがどんなに治安が悪いか、他の保護者の人に聞いてほしい」と伝えます。 とにかく、椿さんの状態を正確に伝えることが大切なのです。「私が精神の病にかかってたらどうする?」というような抽象的な言い方ではなくてね。 さて、椿さん。校長先生に手紙を書いたのに、まったく変化がない場合も想定しておきましょう。 そうなる可能性は、悲しいことですが、あります。大人達が「とにかく現状を維持しよう」「波風をなるべく立てないようにしよう」と思ってしまう結果です。 一週間たっても、何も変化がなければ、また、校長先生に新たなレポートを送ります。(ですから、手紙を送った次の一週間も、記録は取っておきます) そして、「こんなことが先週、ありました。お願いです。助けて下さい、校長先生」と書きます。 それでも、何の変化もなければーー椿さんの親が理解してくれていたら、親に「校長先生は、何もしてくれない。どうしたらいいと思う?」と相談して下さい。 親が「我慢しなさい」とか「あんたの考えすぎよ」なんて言うのなら、椿さんが住んでいる町の教育委員会にレポートを送ります。学校名、クラス名を書いて匿名でね。「校長先生にお願いしたのですが、何もしてくれません。お願いです。助けて下さい」と手紙を添えます。 それで様子を見てみてください。 椿さん。どうですか? 「負けないぞモード」は大変ですが、何も悪くない椿さんが体調不良でこれ以上苦しまないために、今、踏ん張るための活動です。 大変そうに、苦しそうに見えますが、何もしないでずっとクラスのストレスにさらされて、体調不良に苦しむよりずっと希望があると思います。 希望を作るのは意志です。受け身では希望は残念ながら生まれないのです。 椿さんの「負けないぞモード」を心から応援します。 【鴻上さんへの相談、募集中!】あらゆる人間関係、組織のなかで、相談者の身に起きている困ったこと、身動きのとれない境遇、逃げ出したい状況など、すべての悩める事態に鴻上尚史さんが答えます。ぜひ、あなたの悩みをこちらからご投稿ください。※投稿に当たっては、注意事項を必ずお読みください。
鴻上尚史
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