コンビニでのトイレだけ利用はマナー違反? アメリカはむしろ逆だったドライブ中のトイレ問題
日本のトイレは世界的に見ても優秀
ここ最近、ネット上にて、「コンビニ(コンビニエンスストア)でトイレだけ使う」ことの是非が話題になっていた。コンビニにトイレの使用だけのため立ち寄るのではなく、使用したら何かその店で購入してお礼すべきではないかとのことである。 【画像】高速道路にあるSAとPAの区別がじつはアバウトだった コンビニ側としては気軽にトイレを利用できるようにする背景には、当該店舗でついでに買い物をしてほしいという狙いはあるだろうが、必ず何かを買わなければならないというわけでもなく、買うか買わないかは個々人が判断すればいいものと考えている。それでも気になる人はレジにいるスタッフに「トイレお借りします」と声をかければいいだろう(『声をかけてください』と貼り紙している店舗もある)。 日本の場合は公園などの公共の場所に綺麗な公衆トイレが設置されることが多いのも、このような論議の呼び水となっているともいえる。トイレだけを利用するならば、公衆トイレを使えばいいだろうということにもなる。 ただ、昨今の社会情勢を見ていると、男性ならまだしも女性については公衆トイレの利用はさまざまなリスクが目立つことも否定できない。ドライブなどの出先で安全に利用したいとなれば、店舗スタッフの目が届き、よりリスクの少ないコンビニのトイレの利用となるだろう。 これが欧米になると話は変わってくる。筆者はアメリカ、おもに南カリフォルニア地域に出かけレンタカーを借りて気ままなひとり旅を楽しんでいる。しかし、筆者の経験からすると、アメリカで公衆トイレを探すのは至難の業といっていいし、あってもその多くは使用状況がかなり悪く、場所にもよるが犯罪に遭遇しやすいところと考えたほうがいい。そのためもあるのか、お腹が痛くなったとして駆け込んでも使うのをためらう状況のトイレも多い。
海外ではトイレは店の出入り口にある場合も多い
アメリカを訪れ始めたときに「どうしようかな」と迷っていたときに、「ファストフードやファミリーレストラン」のトイレ利用を勧める情報が目に入った。おもに郊外となり、店舗設計によって異なるのだが、多くの店舗ではキャッシャー(レジ)を通らずに出入口からすぐ近くにトイレのある設計になっている。 複数の全米規模で展開する有名なホームセンターの多くも、たいていの店舗はキャッシャーを通らずに出入口のすぐ近くにトイレがある設計となっている。もちろんショッピングモールならば広大な駐車場があり、建物内にも日本のように多数のトイレが用意されているので、トイレだけの利用も気軽にできるので、筆者もよくお世話になっている。 入口近くという設計もあるので、情報どおりにトイレだけ利用する人が見ていても確かに多い。ガソリンスタンドはキャッシャーだけではなく、コンビニ機能も併設しているところがあれば、誰でも利用できるトイレがあるし、小規模なガソリンスタンドでも「トイレを貸して欲しい」と伝えるとカギを渡され店舗外にあるトイレに案内してくれる。日本とは治安状況がまったく異なるので、公衆トイレは犯罪の温床になりやすい。そこで公衆トイレの補完的機能を一部店舗が担っているようである。 以前、運転中にどうしても用を足したくなったのだが、気軽に利用できる店舗がみつからなかったので、道路沿いにある普通の事務所に駆け込むと快く貸してくれた。何回かそのような緊急的な利用をしたことがあるが、印象としては意外なほど日本よりも寛容なように見えた。アジア人(有色人種)である筆者がいきなり「トイレを貸してほしい」とやってくるのは、日本では想像できないぐらい身構えられかねない行為でもあるのだ。 ただし、これは比較的治安のいい郊外での話。市街地中心部では状況が変わってくる。ニューヨークのマンハッタン地区の有名ハンバーガーチェーンでトイレだけ利用しようとすると、「何か買ってくれ」といわれた。また、ポピュラーなところでは、25セントなど硬貨を投入して利用する「有料トイレ」となっていることも多い(日本のように鉄道の駅ならどこでもトイレがあるという環境でもない)。 最近は充電設備の整備もあるのか、砂漠の真ん中でもサービスエリアが新設されていたり、全面リニューアルされていることが多い。しかし、その規模に対して設置されるトイレの数は驚くほど少なくて驚かされる。 高速道路は有料ではなく原則無料なので、トイレだけではなく食事についても、いったん高速道路をおりて利用するのが当たり前で、日本のようにレストランやガソリンスタンドまで併設したものはなく、その数も少ない。 東南アジアでは日本と同じように高速道路が有料となることが多いので、サービスエリアも日本式というか、コンビニ、ガソリンスタンド、フードコート、トイレを設置したものをよく見かける。 日本の観光地では、インバウンド(訪日外国人旅行客)が多くなり、トイレを開放していないコンビニの店舗(店舗設計上の問題)にもトイレ利用のため訪れるインバウンドがあまりにも多く、その対応に苦慮している様子もうかがえるようになってきているが、それも諸外国の公衆トイレ事情があるのかもしれない。 日本のコンビニは屋外の看板にトイレマークをつけたりして気軽な利用を促しているが、実際は店舗の奥に用意されるのが一般的。アメリカでもガソリンスタンド併設のコンビニのような店舗(一般的なコンビニでトイレを開放しているのは見たことがない)は意図的なものを感じるが、店舗奥にトイレがあるので、「ついでに何か買ってほしい」という狙いがあるのは否定できない。 ちなみにセルフ給油で現金払いがほぼ一択だったころには、アメリカではガソリン代は給油前にデポジット代わりにキャッシャーで現金を渡し、給油後にお釣りをもらう方式が一般的であった(それまでは給油後にキャッシャーへ行き払っていたが治安悪化で払わないで逃げる人が多くなった)。 そのときは清算時に、たとえば欲しい飲み物をレジにもっていき購入意思を伝えると、お釣りから差し引いて払うこともできたが、いつからかできなくなってしまった。いまは給油機にあるカード決済機で支払うのが一般的なのだが、まだまだICチップ付き(もしくは海外発行のカード?)クレジットカードに対応していない機械もあり、筆者のメインカードでは「キャッシャーで支払え」と表示が出るので、キャッシャーへ行き、「20ドル分」などと伝えてレジでカード決済してから給油することがある。「こうなるとトイレのついでに何か買う」という気もちにもあまりなれないとも思っている。 一方で、ファストフードやファミリーレストランは出入口近くにトイレがあるのが一般的であり、トイレだけの利用がしやすくなっている。日本でのそのような店舗内のトイレは探すのにも苦労するケースも多いぐらい店舗の奥にあったりする。 日本も年々治安状況は悪化の一途をたどっており、綺麗で使いやすい公衆トイレが残り続けるのか怪しくなってきている。アメリカでのファストフードやファミリーレストランのような役目は、日本ではコンビニが担おうとしているのかもしれない。
小林敦志