大塚HD井上眞新社長「生活者の“ウェルビーイング”に寄り添う存在目指す」、グループ内に医療関連と「ポカリスエット」など消費者向け事業がある価値を発揮しトータルヘルスケアに貢献へ
大塚ホールディングスは10月31日、2025年1月1日付で代表取締役社長兼CEOに井上眞COOが就任し、樋口達夫社長が取締役相談役となる人事を発表した。 10月31日夜には社長交代会見があり、井上新社長は次のように語った。 「大塚グループが目指すのは、企業理念のもと、ヘルスケアに関する製品やサービスの提供にとどまらず、生活者一人ひとりの“ウェルビーイング”(心身だけでなく社会的な面も含めて満たされた状態)に寄り添う存在になることだ」。 「グループ内外の多様な専門性を持つ社員との連携により、新たなイノベーションが生まれることを期待している。小さな成功事例の渦を増やしていきたい」。 現代は、医療の焦点が治療から未病・予防へと移り、人々の健康ニーズも社会的な満足を求める「ウェルビーイング」へと進化している状況にある。大塚グループは医療関連事業、ニュートラシューティカルズ(NC※)関連事業、化学品、デジタルソリューションなど、ヘルスケアに関連する多様な分野を通じて、地域社会を含むすべてのステークホルダーと協力しながら、社会課題の解決に取り組んでいる。 ※ニュートラシューティカルズ(Nutraceuticals)とは、栄養(Nutrition)と医薬品(Pharmaceuticals)から作られた造語。人々の日々の健康維持に有用である科学的根拠をもつ食品・飲料を指す。同社は「ポカリスエット」や「カロリーメイト」などを展開。 井上新社長は、入社後にMR(医療情報担当者)として営業経験を積んで首都圏の2支店で責任者を務めた後、診断事業部事業部長となり、バリューチェーンの全ての機能を経験した。その後、医薬品事業部に戻り、事業企画やアライアンスなど、さまざまな部署での職務を担当。そしてNC事業部へ異動となり、事業全般の責任者としてコンシューマービジネスの立ち上げのほか、北米やヨーロッパの海外関連会社の経営にも携わったという。 こうした異動や職責の変遷は、そのたびに新たな知識を一から学ぶ必要があったという。そのため、知らないことをおそれずに人と対話し、意見交換を通じて事業理解を深め、課題解決を目指す姿勢が身についたとしている。 井上新社長は、「私は医療関連事業とニュートラシューティカルズ関連事業の両方で広範囲にわたる職務を行った経験から、大塚グループが持つこの両事業の深い理解を得ることができた。この両事業を社内・グループ内に持っているからこそ、トータルヘルスケアをお届けすることができると強く感じている。これらの強みを生かし、大塚グループ全体で、トータルヘルスケア企業としてさらに価値を創出し、新たな挑戦を続ける役割を樋口(社長)から託されたと認識している」と話した。 樋口達夫社長は、2008年の大塚HDの設立以降、代表取締役社長兼CEOとしてグループの持続的成長と企業理念の達成に取り組んできた。2010年の上場後には第1次中期経営計画を発表し、収益は当時の1兆円から第3次中期経営計画の最終年度である2023年には約2倍の2兆200億円に達し、過去最高の業績を達成している。 ただ、地球環境問題、地政学的リスク、AIを含めた科学技術の進化など、大きく変化する社会や経済の中で、長期的視点に基づいて、社会課題を起点にしたソリューションを提供し続けるためには、イノベーションが不可欠だ。 大塚HDの2024年からの第4次中期経営計画では、新規事業の拡大と次世代の成長を生み出す投資を進め、「新規事業の拡大と次世代の成長を生み出す投資を促進ー創造と成長の5年間ー」をテーマに事業を進化させ、社会的インパクトを創出することを目指している。 樋口社長は井上新社長について、次のように話す。 「今回の社長交代は、大塚グループが次のステージへ進むための重要な一歩だ。井上(新社長)は、医療、NC関連事業の双方においてリーダーとしての豊富な経験と実績を持ち、2024年1月からは当社のCOOとして事業戦略の実践の中心的役割を担ってきている。事業推進におけるリーダーシップ、人材および組織マネジメントには卓越したものがあり、主要事業の戦略構築と実践、およびアライアンスマネジメントなどの事業展開において、十分な成果を上げている。これらの経験を活かし、グループの連携を強化し、大塚グループならではのイノベーションを創出し続け、グループを率いてくれると確信している」。 さらに、大塚グループが取り組むトータルヘルスケアの考え方を次のように述べた。 「ニュートラルシューティカルズや医薬品に分けて話しているが、実際は分けられるものではない。たとえば、同じ一人の人間が、健康の維持をする、栄養を考える、運動をする、病気にならないように免疫を上げる、病気になったらすぐに治療を受ける。これは違った人ではない。当社では事業を分けてはいるものの、日頃から健康をどうやって維持するかということは、実は同じことである。だからこそ、“ウェルビーイング”という概念について、われわれはもう少し事業を広げて取り上げていきたいと考えている」。
食品産業新聞社