高円寺はどのようにして「古着の街」になったのか?
ヌードトランプが牽引した高円寺古着カルチャー
高円寺の古着屋の歴史を語る上で欠かせないのが、「ヌードトランプ(NUDE TRUMP)」です。 2005年に発売されたムック本「たのしい中央線」に収録されている「高円寺対談!!」では、ヌードトランプの松村逸夫オーナーと、セレクトショップ「ビームス(BEAMS)」の南馬越一義クリエイティブディレクター(当時)が、高円寺の古着カルチャーの成り立ちについて語っています。 「松村:やっぱりライブハウスの文化ですよね。もう人種が完全にロック寄りじゃないですか。住んでる奴の間でもジャンルによって住む場所が違うらしくて。野方のほうがデスメタル、中野坂上がハードコアとかね(笑)。「俺はデスメタルだから、あっち住みます」とか(笑)。」 「一同:爆笑」 「松村:「そんなのあんの?」って感じだけど、実際あるらしいですよ(笑)。」 「南馬越:「NUDE TRUMP」を最初に開いたときからそうだったの?」 「松村:わからないけど、高円寺にロックが好きな奴が多かったのは確かだから。だから、最初はできるだけロックっぽいテイストに近いものを売ってたんだけどね。ライダースとか、Tシャツとか。高円寺の最初の頃はそんなだったな。(「たのしい中央線」より引用)」 松村さんは、日本のフリーマーケットで知り合った人物からアメリカでの古着の買い付けに誘われ、仕入れた古着を新宿のディスコ「ツバキハウス」で開催されていた「ロンドンナイト」などのイベントで販売するようになります。余談になりますが、音楽評論家、DJの大貫憲章さんが主催していたロンドンナイトは当時最先端の東京カルチャーの発信地で、1990年代の裏原宿ブームを牽引しその後世界のファッションシーンに多大な影響を与えることになる藤原ヒロシさん、高橋盾さん、NIGO(ニゴー)さんらが集っていました。 松村さんが高円寺にヌードトランプを開店したのは1987年。それまで、近隣の住人が着古した衣類を買い取って販売するリユースショップのような店舗はあったものの、アメリカをはじめとした海外で買い付けてきたアイテムを販売する古着屋は、高円寺にはありませんでした。 「南馬越:でも、輸入の古着も高円寺で一番最初に始めたのは松村さんでしょう。」 「松村:日本の古着売ってたり、DCブランドの古着屋さんはあったけど、アメリカのを売ってるのは俺が初めて。あの頃はお金がなくて古着を買いに来る人もいたけど、 ヴィンテージブームのハシリみたいな時代だからヴィンテージのライダースとか軍物とかデニムを、探しに来る人もいた。(「たのしい中央線」より引用)」