【新年に登るべき山はここ】“日本一”に囲まれた絶景低山「満観峰」で楽しむ新春山はじめ<静岡県・焼津アルプス>
■花沢の里に朝鮮岩にと、見どころも豊富
いくつかある登山コースの中では、花沢の里から鞍掛峠を経て、満観峰を目指す道のりがポピュラーだ。JR焼津駅から歩き始め、市街地を抜け、花沢の里から山に入っていく。 花沢の里は谷間にある古い集落で、旧東海道と重なる。静岡県初、国の重要伝統的建造物群保存地区でもある。歴史的な雰囲気をそこかしこにとどめているものの、いまも営みがちゃんと続いており、暮らしの様子を随所にうかがうことができる。 目につくのは古い家屋ばかりではない。年季のはいった石垣や蔵、丁寧に植えられた木花の存在も素敵だ。これぞ日本の風景という環境の中を、なんだかめでたい気分になって歩けるのが花沢の里のいいところ。この雰囲気、好きだなあ。 登頂後はピストンで同じ道を戻ってもいいけれど、個人的なおすすめは、満観峰から朝鮮岩に向かう下山ルートだ。なにしろ、朝鮮岩からの眺めがまた最高。標高は295mだから、満観峰よりずっと低い。にもかかわらず、超絶景。これは市街地の近さと目線の低さゆえの迫力からくるもので、まさしくスペクタクルな“低い絶景”が楽しめる。帰りは東にある安倍川駅へと向かい、電車でひと駅の静岡駅へ。 東京駅から早い新幹線に乗れば、9時すぎには焼津駅に到着する。安倍川駅までのコースタイムは6時間から7時間ほどだから、16時前後には行動終了できるだろう。もちろん体力的なことや山行目的によって時間の前後があるけれど。それでも、静岡駅までは3駅の移動。軽く一杯やる時間は、きっとある。 そんなわけで、めでたさを感じながら富士山の展望を楽しむ静岡の旅。新年の山はじめに、ちょっとした週末トリップと日帰りハイクを絡める計画はアリだと思う。とはいえ、天気が悪くて富士山が見えないとちょっと残念だから、最新の天気予報はしっかりチェックしよう。 <低山トラベラー厳選。満観峰周辺の立ち寄りたいスポット> 【日帰り温泉】静岡市側なら「用宗みなと温泉」と周辺散策も楽しい 【日帰り温泉】焼津市側なら「サンライフ焼津 黒潮温泉」が◎ 【帰りの一杯】静岡駅周辺は飲み屋多数。静岡おでんと静岡麦酒で決まり! 【追いハイク】静岡の市街地と東名高速道の景観が面白い「花沢山」 【追いハイク】焼津の市街地と港の風景がすばらしい「高草山」 大内 征(おおうち せい) 低山トラベラー/山旅文筆家 土地の歴史や物語を辿って各地の低山を歩き、自然の営み・人の営みに触れながら日本のローカルの魅力を探究。ピークハントだけではない“知的好奇心をくすぐる山旅”の面白さとトレイルを歩く楽しみ方について、文筆と写真と小話で伝えている。 2016年よりNHKラジオ深夜便「旅の達人~低い山を目指せ!」に毎月レギュラー出演中。2022年よりLuckyFM茨城放送「LUCKY OUTDOOR STYLE~ローカルハイクを楽しもう~」のパーソナリティを担当している。NHKBSプレミアム「にっぽん百名山」では雲取山と王岳・鬼ヶ岳の案内人として出演した。著書に『低山トラベル』、『とっておき!低山トラベル』(ともに二見書房)、『低山手帖』(日東書院本社)などがある。 現在、テレビやラジオ番組のゲスト出演、雑誌やウェブマガジンの寄稿、登山講座の講師、地方自治体のプロジェクト参画など、低山に精通する第一人者として精力的に活動中。NPO法人日本トレッキング協会常任理事。宮城県出身。 @sei_ouchi
大内 征