「走る宝石」「神がかってる」パガーニ・ウトピア、数億円のハイパーカーの実力は?【試乗記】
● AMG特製V12ツインターボと軽量ボディ。 MTは絶対的な速さより操る楽しさを追求した証 久々に間近でみたウトピアのスタイルにはホレーシオが愛してやまない1960年代のスポーツプロトタイプレーサーの雰囲気が漂っている。VIPカスタマーにとってホレーシオは“創造主”、つまりは神そのもの。彼の好みの反映こそカスタマーの望むところだろう。 逆もまた然り。ホレーシオはカスタマーもまた“もうひとりの神”であることをよく知っている。その際たる例がトランスミッションだ。デヘドラルドアを跳ね上げ、ワインレッドのレザーに包まれたシックなインテリアを覗き込むと、屹きつりつ立するスティックシフトが見えた。3ペダルマニュアルトランスミッションの復活は、ラップタイム競争よりドライビングファンを望む多くのカスタマーからの要望を聞き入れて、開発の途中で急遽加えたものだ。 キャビンの背後にはメルセデスAMGがパガーニ用に再設計し、いまなお生産する6L・V12ツインターボが収まる。最高出力864hp、最大トルク1100Nmという数値そのものは1000psオーバー、なんなら2000psさえ登場する昨今のスーパーカー界においては物足りなく思えるかもしれない。けれども2000psのフルエレクトリック・ハイパーカーとは違って、ウトピアの車重はわずか1280kg。パワーウェイトレシオは約1.5kg/psと、驚異の数値だ。ホレーシオは以前よりスペックだけをいたずらに追求するのではなく、総合的な性能を重視してきた。今回、うれしいことに彼の口から「12気筒エンジンを諦めるつもりはまったくない」という自信たっぷりなフレーズも聴くことができたのだった。 パガーニ社の生産規模は現在のところ年産最大50台。試乗したウトピア・ベルリネッタの生産台数は99台に限定され、取材当時(7月下旬)には44台目が完成間近だった。一度に8台の生産がオーガナイズされており、すでに40台以上が完成したという。顧客へのデリバリーも始まっている。3ペダルマニュアルのオーダーが半数以上を占めるらしい。また先日開催されたモントレー・カーウィークでは待望のロードスター(限定130台)も発表されている。 (CAR and DRIVER編集部 報告/西川 淳 写真/牧田良輔)
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