目指せミニマム界の“レジェンド”メロディーレーン!美浦で一番小さい馬シュトレームング
あれは3週間ほど前。トレセン内でネタ探しに奔走していると、ご無沙汰していた藤原亮厩務員(美浦・和田雄厩舎)と再会した。軽い気持ちで「何か面白い話ないですか?」と振ってみると、それがジャストミート。「僕の担当馬を取材してくださいよ。たぶん今、美浦で一番小さい馬です」とほほ笑んでいた。 聞けば、その馬の名はシュトレームング(牝2歳)。父はゴールドシップ、母は08年福島牝馬Sの勝ち馬マイネカンナというラフィアン血統で、母の1つ上の半兄に09年天皇賞・春を制したマイネルキッツがいるファミリーの出身だ。血統表を見ると、かなり濃いインブリードの持ち主。そのあたりが彼女をミニマム化させたのだろうか? そうこうしていると、予定よりも早く「今週、デビューすることになりました」と藤原さんからLINEが届き、取材日は新馬戦の翌週に決定。まずは、11月24日の東京6R(芝1800メートル)でお手並み拝見といくことにした。 レース当日、パドックを周回する彼女の姿を見て驚いた。先頭を歩くオプレントジュエルは520キロと大柄で、3番手のダブルイーグルも504キロの好馬体。その間に挟まれた2枠2番のシュトレームングは…何と354キロ!。藤原さんは「装鞍所から(横山)武史君は“何、この馬~”と不思議そうな顔で見ていたし、C・デムーロ騎手も“Oh!ミニサイズ!”って(笑)。ジョッキーや厩舎関係者、パドックのファンの方々やJRA職員の皆さんから大人気でした」と振り返る。 レースぶりにも驚かされた。ポンと好スタートを決めると、ヤル気満々にハナへ。柔道や相撲でも小柄な人ほど負けん気が強いと聞いたことがあるが、気迫あふれるその走りはまさにそれ。柴田大知騎手のヘルメットの位置の低さは映像で確認してもらうとして、最後まで歯を食いしばり、ひたむきに走る姿を見て一瞬にして心を奪われた。 最後の直線で力尽き11着に敗れはしたが、藤原さんは「気持ちでは負けていませんでしたね。ただ、ジョッキーも話していましたが、いかんせん他の馬に比べて一完歩が小さいんです。そればかりは仕方がないですし、一気に成長を望むのはかわいそう。少しずつ体を増やして、少しずつ着順を上げてくれたら」と前向きに話していた。 “ミニマムあるある”も聞いてみると「小さいので馬具がなかなか合わないんです。蹄鉄も小さいですしね。ゼッケンもかなり大きく感じました」と話していたが、彼女は6月2日の遅生まれ。まだまだ成長の余地を残している。ミニマム界の“レジェンド”的存在のメロディーレーンも、初勝利はデビューから8カ月後の10戦目。長い目で成長を見守りたい。 次戦は未定だが、状態次第で12月中にもう1走する予定。偉大な先輩の足跡を追い、まずは1勝を目指す。「メロディーレーンはデビュー時から20キロぐらい増えて、今のこの馬ぐらいのサイズなんですよね。まあ、今から20キロ増えても370キロ台ですけど(笑)。夏の函館や札幌に限られますけど、いつかあの馬と併せ馬ができたら面白いですよね。実現できたら盛り上がるでしょう」。G1シリーズ真っただ中だが、個性派も競馬界を盛り上げる。皆さんもぜひ応援してください。(デイリースポーツ・松浦孝司)