FRB利上げ以降、冷え込む世界経済 先行き12カ月のマーケット予想は?
2016年は年初からの荒れ相場で為替、株式相場の予想はなかなか難しい状況が続いております。下半期に入り、再度現状を確認し、第一生命経済研究所の藤代宏一さんが新たなる先行き12カ月のマーケット予想を算出しました。
FRB利上げ以降、冷え込む世界経済
日経平均株価が1万6000円を割れ、USD/JPYが一時103円台に突入したことを受けて、先行き12カ月の予想を以下のとおり変更します。新たな予想は日経平均が1万5000円(従来1万8000円)、USD/JPYが100(従来118)。 まずは、USD/JPYについて。変更の理由は、米国経済の力強さが失われ、(筆者が予想する)連邦準備制度理事会(FRB)の利上げパスに大きな変更が生じたためです。2016年2月の段階では、FRBの複数回かつ断続的な利上げシナリオの復活もあり得ると予想していましたが、残念ながら米国経済ないし世界経済は、それに耐えられるほど強くなさそうです。実際、15年12月に実施されたFRBの初回利上げ以降、世界的に景況感は冷え込んでます。
グローバル総合PMI(企業の景況感を表す指標)は51.1に落ち込み、より敏感に景気変動を反映する製造業PMIは50.0へと水準を切り下げています。
FRBの約10年ぶりの利上げは表面上の25bp(1bp=0.01%)という数値をはるかに上回る引き締め効果をもたらしました。FRBの(たった25bpの!)利上げは金利の付かないコモディティー(原油、金、鉄鉱石など)の相対劣後を際立たせ、それはクレジット市場への打撃(特に低格付け企業の資金調達)や新興国の資金流出圧力という別の形で金融市場の混乱を誘発しました。 米企業収益はそうした逆風下で前年比減益となり、最近は雇用にも悪影響が波及しつつあります。5月雇用統計の非農業部門雇用数がわずか3.8万人というショッキングな数字となったほかにも、企業の採用意欲が衰えていることを示唆する指標が散見されます(新規失業保険申請件数の反転上昇、求人件数の増加一服、その他多くの企業サーベイ指標)。企業は高い雇用コストと低い労働生産性を嫌気して労働投入量の拡大に前向きでなくなりつつあるのでしょう。これら一連の雇用指標を見る限り少なくとも現状では、労働市場の回復ペース再加速に自信が持てません。