FRB利上げ以降、冷え込む世界経済 先行き12カ月のマーケット予想は?
先行きに自信がないのはFRB高官も同じです。6月連邦公開市場委員会(FOMC)のドットチャート(FOMC参加者の政策金利見通しを集計したもので3・6・9・12月に公表される)は、17年末の中央値が1.625%へと0.25%下方シフトし、18年末に至っては2.375%へと0.625%も下方シフト、景気に中立的とされる政策金利(ここではlonger runの金利、以下、ターミナルレートという)も3.0%へと2回連続で引き下げられました。現時点の利上げ計画は18年末までの約2年半でわずか8回(16年2回、17年3回、18年3回、0.25%×8回=2.0%)ということになります。これは従来の10-11回に比べて控え目です。
ところで、今から2年半も先の18年末の政策金利見通しが下方修正されたことは、何を意味しているのでしょうか? ターミナルレートが3.0%で変わらないことを前提にした場合、そこに到達するには19年以降も景気が拡大が続き、さらに2~3回の利上げが実施されるということになります。 失業率が4.7%まで低下するなど経済の伸びシロが小さい現状において、景気回復があと3年半も続くことに違和感を覚えるのは筆者だけではないでしょう。過去の失業率サイクルを見ると歴史的に4%が下限なので、早ければ向こう1年くらいでボトムに達する可能性があると考えるのが自然でしょう。つまり、FFレートがターミナルレートの3%に到達する前に景気後退を向かえる可能性が高いということです。このことは、市場の関心が、思いのほか早い段階で“利上げ打ち止め”に移行するシナリオを喚起します。筆者は、今後も利上げ計画の下方シフトが続き、遅くとも17年末には逆イールド(※利上げ打ち止め、利下げに予想が変化)に近い形状になるとの基本感を抱き始めました。
以上、米国経済ないし世界経済の弱さを主因にUSD/JPYの見通しを変更しました。もちろん、日銀の行動も重要なファクターですが、黒田バズーカといえども、ドル安の風を跳ね返すのが困難であることは、1月29日のマイナス金利導入時に数日しか円安の反応がみられなかったことですでに証明されています。下落トレンドに転じたUSD/JPYの方向感を覆すような威力は期待できないでしょう。筆者は、日銀がFEDの利上げに追随する格好で追加緩和を決行すると予想(※参考記事)。残り少ない弾を最も効果的なタイミングで使うとみていますが、その効果は持続性(たとえば6カ月)を欠くと思われます。