球界大御所が矢野監督の「今季限り退任」表明で揺れる虎に緊急提言…「阪神は次期監督として落合博満にオファーすべき」
広岡氏は、江本孟紀氏の「ベンチがアホやから野球がでけへん」発言事件が起きた1981年に辞任した中西太監督の後任監督として阪神からオファーを受けたことがある。この時、阪神が3年、広岡氏が5年の契約年数を主張して交渉の折り合いがつかず、結局、5年契約を提示された西武の監督に就任した。 矢野監督は、今季4年目。3位、2位、2位と3年連続でAクラスの好成績を残し、チームに種をまき、育成してきた矢野監督にとって、今年が集大成のシーズンだっただろうが、広岡氏の監督哲学からすれば、その手法は、理解できるものではなかった。 水面下では時間をかけて次期監督選びが始まる。生え抜きのOBか、それとも外部招へいか。OBの中でも、若手なのか、経験者なのか。阪神は、様々な選択肢から検討を重ねることになるが、広岡氏が推薦するのは、意外な人物の名前だった。 「次期監督としては落合にオファーをするべきだ。今の球界で阪神を勝たせることができるのは彼しかいない」 落合氏は、中日で2004年から2011年まで8年間指揮を執り、リーグ優勝4度、日本一1度、2位3度、3位1度と驚異的な好成績を残した。監督退任後は、2年間の評論家生活を経て、中日のGMに就任。ドラフト戦略には賛否があり結果は出なかったが、ここでも3年間、独自の手法で辣腕をふるい、チームを統括的に立て直した経験を持つ。 「阪神は昨年優勝にあと一歩までいったが、チーム力があったのかと言えばそうではない。巨人がつまらない野球をやって、こけただけだ。矢野はキャッチャー出身ということもあり、多少は野球を知っている。生え抜きではないが“阪神愛“もあった。だが、井上ヘッドも含め首脳陣が若すぎた。ヤクルトの高津も若い監督だが、彼にはメジャーや韓国、台湾など、あらゆるところで野球をやってきた豊富な人生経験があった。監督としての能力差が、紙一重のところで出たと思う。その足りなかった部分を埋め、あと一歩のチームを勝たせるのに最も適した人材は厳しさと粘り強さを持った落合だ。現役時代の素晴らしい成績だけでなく監督としての実績もあり、彼の著書を読んだが、なにより、しっかりとした野球理論、哲学を持っている。彼なら阪神を優勝させますよ」
落合氏は、関西のテレビ番組にゲスト出演し、阪神について語る機会が少なくない。先日もMBS系の番組で、阪神OBの掛布雅之氏と対談して阪神や佐藤輝明らについての持論を展開させた。 中日監督から阪神監督の“横滑り“には、虎を18年ぶりの優勝に導いた故・星野仙一氏の先例もある。 “劇薬“ではあるが、在野にいる監督候補としては球界大御所さえ認める落合氏がナンバーワンの”優勝請負人”であることは間違いないだろう。いずれにしろ、矢野監督の前代未聞の退任表明により、阪神は、ペナントレースの戦いと並行して次期監督選定を進めるという異例のシーズンを迎えることになる。 (文責・駒沢悟/スポーツライター)