阪神の新ストッパー候補ケラーにスアレスの代役が務まるのか…データから浮かび上がる不安と可能性
阪神が18日、前パイレーツのカイル・ケラー投手(28)の獲得を正式に発表した。ケラーは、パドレスと契約したクロ―ザー、ロベルト・スアレス投手(30)に代わる新しいクローザー候補。球団HPには、「日本でプレーするチャンスをいただき、タイガースに感謝するとともに非常に興奮しています。タイガースを日本一にするために、自分のベストを尽くし勝利に貢献したいと思います」というケラーのコメントが掲載されている。 ケラーは果たして、今季42セーブをマークして阪神の優勝争いに貢献したスアレスの穴を埋めることができるのか。
球種は最速157キロの直球とカーブのみ
ケラーは15年のMLBドラフトでマーリンズから18巡目で指名され、19年にマーリンズでメジャーデビュー。20年1月、エンゼルスにトレードされ、今年4月、パイレーツが契約を買い取る形で獲得すると、今季は32試合に登板し、1勝1敗、防御率6.48だった。これを見る限りでは心もとないが、昇格前は3Aインディアナポリスで13試合に登板し、2勝0敗、防御率1.96という数字が残る。 球種は、最速97.8マイル(約157キロ)の真っすぐと平均81.4マイル(約131キロ)のカーブのみ。2球種という点では19年に阪神に在籍し、現在はパドレスにいるピアース・ジョンソンと同じ。 しかし球速は、ジョンソンの真っすぐの平均球速が95~96マイル(約153キロ~約154キロ)なのに対し、ケラーは94~95マイル(約151キロ~約153キロ)とやや落ちる。カーブもジョンソンが84~85マイル(約135キロ~約137キロ)だが、ケラーは80~82マイル(約キロ~約132キロ)。もちろん、球速ですべてが決まるわけではなく、今年の数字で比べると、例えばケラーのカーブの空振り率は34.7% で、ジョンソンの32.7%を上回る。
ただ、ケラーは今年、33回1/3で36三振を奪った一方、22四球を出しており、WHIP(1イニングあたり、何人の走者を出したか)が1.56と高いのも、そこに原因がありそう。ジョンソンも来日前は決して制球力が高い投手ではなかったが、ここまで悪くなかった。日本移籍前、ジャイアンツでのBB/9(9イニングあたりの四球数)は4.5。今年のケラーは5.9。3Aでは1.5だったが、メジャー、マイナー含めたキャリア平均は3.9なので1.5は出来すぎか。 それ以上に気になるのは被本塁打の多さ。今年は9本塁打を許しており、HR/9(9イニングあたりの被本塁打数)は2.4で、30イニング以上投げたリリーフ投手の中ではワースト3位。メジャー全体では同ワースト5位タイ。これでは僅差の試合で起用しにくい。ジョンソンが阪神時代、58回2/3を投げて被本塁打2本、スアレスが今年、62回1/3を投げて被本塁打0だったことを考えれば、同程度の数字を残せるかどうか疑わしい。 今年、3Aでは1.0だったが、メジャー3シーズンの通算は2.3。フライの比率が平均で50%を超えるフライボールピッチャーの宿命ともいえるが、今年30イニング以上投げたリリーフ投手のなかで、フライの確率が50%を超えたのは24人。ケラーのフライに占める本塁打の割合は19.6%で、24人の中でワーストだ。 バレル率(打球初速と打球角度の組み合わせで、例えば、打球初速が100マイルで打球角度が24~33度なら長打の確率が高くなる)も14.1%で、30イニング以上投げたリリーフ投手の中ではワースト5位タイ。こうした数字から見ると、やはり、クローザーとしての適性に疑問符がつく。おそらく、その要因も制球力に起因するのだろう。 このところ大リーグでは、高めの真っすぐを軸とし、同じ高さからカーブを落とすというのが一つのトレンド。ケラーも、その配球ができているときは高めの真っすぐで空振りを取れているが、相手が右か左かにかかわらず、真っすぐがベルト付近の高さに集まる傾向がある。