5年に1度の財政検証で判明! 誤解だらけの「年金」
7月3日に、年金財政検証が発表された。報告によると、財政は改善に向かっているという。少子高齢化が進む中、そんなわけなくないか!? だが、専門家に詳しい解説を求めると、意外にも財政どころか「世代間格差」「財源」「納め方」などの常識がことごとく間違っていたことが判明! 【図表2】2022年の人口ピラミッド、【図表3】世代別「給付と負担」の関係 ■最新の財政検証の結果は? 7月3日、厚生労働省は公的年金について、2024年財政検証の結果を発表した。 これは5年ごとに行なわれる年金財政の定期点検で、自動車でいう車検にあたる。日本経済について楽観から悲観まで複数のシナリオを作り、今後の年金制度をシミュレーションして必要な整備を行なうための大事な手続きだ。 年金といえば、少子高齢化の影響で現役世代にとっては損だらけの制度だと報じられることも多い。そこで改めて年金制度のリアルを突き止めるべく、社会保険労務士として数多くの年金相談を受けている、"年金ウオッチャー"こと高橋義憲さんに話を聞いた。 * * * ――今回の財政検証の結果をどう見ますか? 高橋 ひと言で言えば、年金財政には一定の改善が見られました。 ――えっ!? そもそも最近はコロナ禍で少子化が加速しましたよね。どんどん悪化してるんじゃないんですか? 高橋 改善の理由はふたつあります。まずひとつは、厚生年金の加入者が増えたことで年金保険料を支払う人、つまり年金制度の支え手の厚みが増したこと。そしてもうひとつが、積立金の運用がうまくいっていることです。 ――ひとつ目から順に教えてください。 高橋 近年、日本では女性と高齢者の就業が増加しているんです。15~64歳の女性の就業率は20年に70.6%に達しており、先進国平均の59.0%を大きく上回っています。そして高齢者の就業率は同年に25.1%となり、こちらも先進国でトップクラス。この両者が保険料を納めることで、年金財政は徐々に改善してきたわけです。 ――ほ~。では、もうひとつの積立金というのは? 高橋 年金は過去に納められた保険料のうち、払い出されなかった分が積み立てられ、運用されています。そしてこの20年ほどは株価が順調だったこともあって、01~23年の間に約153兆8000億円もの巨額の運用益を上げているんです(図表1)。少子高齢化の進行で先行きが懸念されていたその裏で、実は年金財政に強い追い風が吹き続けていたんですね。