【F1分析】ノリス、ふたつの大きすぎるミスで母国イギリスでの勝利を逃す。なぜレース終盤にミディアムタイヤを履かなかったのか?
F1イギリスGPで優勝したのは、メルセデスのルイス・ハミルトンだった。2021年サウジアラビアGP以来、実に2年半ぶりの勝利。7回もF1タイトルを獲り、それまでに103回も勝利を手にしていたあのハミルトンが、大衆の前で涙を流す……実に感動的な結末だった。 【リザルト】F1第12戦イギリスGP決勝レース結果 ただ今回のレース、本来ならばもうひとりのイギリス人ドライバーが勝っていてもおかしくなかった。それは、マクラーレンのランド・ノリス。しかしノリスは、2度の判断ミスを犯して勝利をみすみす手放すことになった。 「多くのことが順調だったのに、最後のピットストップで台無しになってしまった。1周の違いだったが、僕らの決断は誤っていた」 ノリスはそう語ったが、当時のことを検証してみよう。 イギリスGP序盤はドライコンディションだった。当時はメルセデス勢が1-2体制を形勢。3番手につけていたマックス・フェルスタッペン(レッドブル)以下を大きく引き離していた。しかしひと度雨が降り始めると、マクラーレンのペースが急上昇。ノリスが一気に首位に躍り出た。 雨が強まり、各車がインターミディエイトタイヤを履いても、ノリスは首位のポジションをキープしていた。このまま行けば、彼にとって通算2勝目も夢ではない……そう思われたが、そこにふたつの落とし穴が待っていた。 そのひとつ目が、ノリスが言うドライタイヤに履き替えるタイミングだ。
■ピットストップ1周の遅れで約6秒失う
このグラフは、F1イギリスGPの決勝レース中の上位勢のラップタイム推移をグラフ化したものである。 雨が弱まり、路面コンディションが急速に改善していくにつれ、各車のペースが向上していった(グラフ赤丸の部分)。そんな中、いつドライタイヤに換えるのかが勝負の分かれ目となった。 ノリスと優勝を争っていたハミルトン、そして後続のフェルスタッペン、さらにはノリスのチームメイトであるオスカー・ピアストリは、38周目を終えた段階でピットイン。ドライタイヤに履き替えた。ドライタイヤに履き替えたことでハミルトンのラップタイムは、一気に6秒速くなった(グラフ青丸の部分)。 ノリスはピットストップが1周遅れたことで、単純計算でこの6秒を損した。その結果、ハミルトンにアンダーカットを許すこととなり、2番手に後退してしまったのだ。 ただこれはまだ決定的な瞬間とは言い難かった。それは、ハミルトンが寿命が短いはずのソフトタイヤを履いたからだ。ノリスは、手持ちのミディアムタイヤを履けば十分に逆転可能だったはずだ。しかしノリスは、ハミルトンと同じようにソフトタイヤを履いてしまったのだ……。