“氷天体の地下海” は有機化合物に乏しい? タイタンでの推定結果
太陽系には、分厚い氷の下に地球を超える規模の海が存在すると予想されている天体がいくつもあります。このような環境は生命の存在を予感させますが、果たして液体の水の存在が “保証” されれば生命がいるかもしれないと考えていいのでしょうか? 土星の衛星「タイタン」特集 地球外生命も期待される天体 ウェスタンオンタリオ大学のCatherine Neish氏などの研究チームは、天体表面に豊富な有機化合物を有し、地下に海があるかもしれないと推定されている土星の衛星「タイタン」について、地表から地下へと輸送される有機化合物の量を推定しました。その結果、有機化合物の輸送量はグリシン換算で7500kg/年以下と、生命の維持には到底足りない量であると推定されました。 有機化合物が豊富なタイタンでさえ生命の維持が困難であることを示した今回の研究は、他の天体ではより条件が悪い可能性を示唆しています。
■凍り付いた天体の下には「地下海」がある?
私たちは今のところ、地球でしか生命を発見していません。生命は深海、氷河、火山など、非常に多様な環境で見つかっていますが、どの場所でも液体の水が無ければ生存できないことが分かっています。このため、液体の水の存在は地球以外の天体で生命を探すための必須条件と見なされています。 豊富な液体の水を持つ天体は今のところ地球だけが確認済みですが、太陽系の中に限定しても有力候補がいくつかあります。これらの天体はどれも太陽から遠く離れたところにあり、表面のほとんどが分厚い氷に覆われています。しかし、その下には豊富な液体の水が存在し、「地下海(内部海)」を形成していると考えられています。 表面が氷に覆われていることからも分かるように、こうした天体に届く太陽エネルギーは氷を融かすほど強くありません。しかし、他の天体の重力によって発生する潮汐力や、岩石に含まれる放射性物質の崩壊熱が、地熱として氷を融かすのではないかと考えられています。地下海が存在すると考えられている候補は、どれも地球よりずっと小さな天体ですが、地下海の体積は地球の海の体積の数倍から数十倍もあるのではないかと考えられています。 光が全く差し込まない深海で、地熱エネルギーを頼りに生存する生命は地球でも発見されているため、地下海の海底に広がる生物圏は容易に想像されます。地下海を持つとされる天体は準惑星の冥王星やハウメア、木星の衛星のエウロパやガニメデ、土星の衛星のエンケラドゥスやタイタンなど多数あり、エンケラドゥスやエウロパのように地下海の存在がほぼ確実視されている天体もあります。これらの天体を汚染しないように、運用を終えた惑星探査機を墜落させないようにするような配慮がされるほどです。