「何度も死のうと思った。死神から逃げたかった」“元ほっしゃん。”の崖っぷちの過去と新たな現在地
貧困やいじめを題材にした理由
酒に溺れ、娘をネグレクトするシングルマザーと暮らす主人公のミコトは、貧困を理由にいじめられた過去を隠しながら、普通の女子高生を装う。だが、あることから家庭環境が知られることになり、陰湿ないじめが再開。小説はミコトが自死を決意する場面で幕を開ける。 貧困、ネグレクト、いじめ、自死という重いテーマを選んだのはなぜか。 「子どもを虐待するニュースが、またかっていうほど報じられるじゃないですか。自分に子どもができてから一層、そういう問題に敏感になったんです。それに、日本は若者の自死も多いですよね。 若者が死のうって思う社会を作ってるのは、やっぱり大人なんで。大人の責任として、声をあげたり何かを表現したりしなきゃいけないっていう思いはずっとありました」。
主人公のミコトは、読み手が苦しくなるほど悩みを吐かず、涙も見せない。そのキャラクターは星田さん自身の性格にも重なるという。 「ミコトに関していえば共通する部分が多くて、僕も昔から悩みを相談できない人間です。彼女はいい子すぎるんです。相手の気持ちを考えて、悩みを言わない。母親にネグレクトされてるのにちょっと優しくされたら、そこに希望を抱いてしまう。でも、そういう心理はきっと僕にもある。 小説に出てくる登場人物一人ひとりを、僕自身が演じるように書きました。だから、母親にもミコトをいじめた同級生にも、すべてのキャラクターに僕の要素が入ってるんです」。
面倒なやつだと思われても「表現者は庶民の味方」
小説の題材に現実的な社会問題を選んだ星田さんだが、自身のSNSでは何年も前から積極的に自分の考えを発信してきた。言葉を控える著名人が多いなか、仕事への影響はなかったのだろうか。 「いい影響なんて一切ないですよ。面倒なやつだなって思われるだけですから。でも、表現者っていうのはやっぱり庶民の味方だっていう考え方が、自分には絶対にあるので。 僕はいま53歳で、次の世代へのバトンタッチは済んでると思ってます。だから、いまは若い世代の未来に間借りさせてもらってる感覚。大人が少し苦しんで、もがいて、いい世の中を作れるんだったらそうしようぜって思います。それが社会での大人の役割だと思うんで」。