飲みニケーションは必要か不要か? 議論で語られない管理職の“決定的な欠点”
深刻な「日本の管理職のコミュ力不足」
近年、この問題が語られる際には「酒を飲んで説教をしないで、学びになる経験を話してやる」とか「割り勘じゃなくて上司がおごる」「注文やお酌をさせない」など酒の席での立ち振る舞いやマナーが重視される。 だが、実はそれは表面的な話に過ぎず、「飲みニケーション」に必要なのは、酒を入れる前の人間関係・信頼関係だ。この「土台」をつくっていないくせに、酔わせて一緒に騒げば結束が深まるといった勘違いをすると、アルハラやパワハラになってしまう。 つまり、「飲みニケーション」に否定的な声が大きくなっているのは、日本に「コミュ力不足の管理職」がそれだけ多いということなのだ。 少し古い調査だが、それを示すような驚きの国際比較調査がある。米コーチング企業のコーチ・エィが2015年、15カ国(地域)それぞれの非管理職100人を対象にしたところ、日本は「上司と部下の関係における良好度」で15位とビリだった(調査対象者は計1500人)。 なぜ日本の部下たちは、上司との関係がうまくいってないと感じているのか。謎を解く鍵は「会話」にある。 日本の上司と部下はよく会話をしている。頻度は15カ国中4位だ。しかし、その会話はキャッチボールではなく、上司が「一方的に話しかけているだけ」なのだ。 上司と部下の話す割合が「ほぼ同じ」と回答した人は29%にとどまり、15カ国中14位。反対に「上司が話している時間のほうが長い」と回答したのは53%にも及んで15位中4位だ。 このように「上司が一方的にまくしたてて、それを黙ってウンウンうなずいて聞く部下」という図式が日本のビジネスシーンの定番となっていることは、最近の調査でも明らかになっている。
昭和の体育会カルチャーがいまだに横行
転職サービスなどを手掛けるパーソルキャリアの調査機関「Job総研」が20~50代の男女を対象に「納得いかない職場の暗黙ルール」があるか質問したところ、「ある」と答えた人は88%に上った(有効回答数:805件)。 理不尽な暗黙ルールの具体的な中身を聞くと、最も多かった回答は「上司の言うことが正しい」(40.2%)。次いで「新人が〇〇をして当たり前」(29.5%)だった。 令和の日本組織では「風通しの良い職場がいい」「フラット型組織を目指すべき」などいろいろ理想論が語られているが、なんのことはない。それらはあくまで表向きの話で、組織内の暗黙ルールとしては、「上には絶対服従で、下っ端はつらい仕事も進んでやるものだ」という昭和の体育会カルチャーがいまだに横行しているのだ。 さて、そこで「上司の言うことが正しい」「新人が〇〇をして当たり前」という暗黙ルールがある組織の若手社員や平社員になったと想像していただきたい。 業務時間中、上司に口応えもできず、新人というだけで当たり前のようにやらされる仕事をしてクタクタになったあなたは、上司に「会社が終わったら飲みに連れていってください」なんてことを口にするだろうか。多くの人はこの上司とできるだけ早く離れたい、と会社を後にするはずだ。 酒を飲んだところで暗黙のルールがあるので、タメ口で「あのさあ、今日仕事中に説教された話、マジで納得いかないんですけど」などと口が裂けても言えるわけがない。