【中国人既卒職女子に聞く】コネ・カネ目当ての若者共産党員、現代中国は特権階級支配社会
文化大革命が上海の銀行家一族の運命を変えた
チーリンがなぜ西安ではなく、上海の大学を選んだのか不思議に思った。彼女は一人っ子であり、両親は当初地元の西安の大学進学を希望。ところが祖父母の強い希望で上海に進学したという。 祖父の実家は上海の名家で両替や金貸しをする銀行を営んでいた。新婚の祖父母は上海の外灘の大きな邸宅に住んでいたが、共産党により邸宅は共同住宅とされ、さらに銀行は国有化で資産没収。そして文革では真っ先に陝西省の農村に“下放”された。(筆者注:文化大革命中に毛沢東の指令により、共産党員や都市の知識人階級が人民に学ぶという“学習目的”のために地方の農村に送られた) 文化大革命の収束により祖父母は省都の西安に移動を許されチーリンの父親も長じて西安で就職した。ちなみに祖父母の食習慣に従いチーリン一家は家では上海料理を常食にしていた。 祖父母の夢は老後を上海で暮らすことで、チーリンが大学卒業後上海で政府機関や大企業に就職すれば上海に生活拠点を移せると考えていたようだ。チーリンによると中国の戸籍制度は徐々に緩和されているが、いまだに地方から北京、上海など大都市への戸籍の移動は制限されているという。チーリンが上海で正規就業しようと卒業後も上海に残っていた背景には文革・下放という現代中国史に翻弄された祖父母の悲願があったのだ。
コネ・カネ目当ての若者共産党員、現代中国は特権階級支配社会
親しくなってくると、チーリンは現在の中国社会への批判を口にした。いわく、親が共産党幹部の子女のネットワークである太子党が幅を利かせている。コネがなければ公務員になれない。 高校・大学の同期で共産党員になった人間が何人もいるが、所詮はコネ・カネ目当て。幹部にコネのない彼ら同期の下級共産党員らは、残念ながら下働きばかりさせられて愚痴をこぼしている。チーリンの批判は祖父母の怨念と自らの就職難体験から生まれたのであろう。
繁盛している家族で営む中華料理屋、女将は江蘇省からの移住者
3月25日。街道沿いにある照明の明るい中華料理屋。女将と長男の中学生、その妹の3人で接客している。話していたら女将は江蘇省の常熟出身と判明。常熟は蘇州に近く風光明媚な町だ。放浪ジジイはメーカー勤務時代に常熟で現地法人設立に携わった経験があるので女将と話が弾んだ。 旦那は韓国人で他の仕事をしており、厨房は江蘇省出身の女将の親戚の若者に任せている。女将によると客筋は地元の華僑系フィリピン人が固定客。中国人観光客や最近増えた中国からの移住者も多いとのこと。 女将はクリスチャンでドゥマゲッティ市街の中国人教会(Chinese Christian Church)に子供を連れて通っているという。イースターのミサに一緒に参加することになった。