日銀・黒田総裁会見1月23日(全文1)賛成多数で金融市場調節方針を維持
5年間の評価と残された課題について
NHK:続いて今回の決定会合、今の任期としては最後の会合となりました。この5年間の評価、そして残された課題についてお伺いさせてください。 黒田:ご案内のとおり2013年当時、日本経済は長年のデフレにより経済の劣化が進んでおり、デフレからの早期脱却が最大の課題となっていました。そうした認識から日本銀行は同年4月に量的・質的金融緩和を導入し、その後も経済・物価情勢の変化に応じて必要な政策対応を行ってまいりました。 そうした下でこの5年間、日本経済は大きく改善いたしました。企業収益は過去最高水準で推移、あるいは最高水準まで増加しているほか、労働市場はほぼ完全雇用となっております。賃金も緩やかながら着実に上昇しております。物価についてもエネルギーと生鮮食品を除いた消費者物価の前年比は2013年秋以降、4年以上にわたってプラス基調を続けており、すでにわが国は物価が持続的に下落するという意味でのデフレではなくなっています。 このように経済・物価情勢は大幅に改善したものの、現時点で2%の物価安定の目標はなお実現できていません。原油価格の大幅な下落なども影響しましたけれども、より大きな要因は長年にわたるデフレの経験から人々の間にデフレマインドが根付いてしまい、その転換に時間がかかっているということもあると思います。 もっとも先行きについてはマクロ的な需給ギャップが着実に改善していく中で、企業の賃金・価格設定スタンスも次第に積極化していくとみられるほか、中長期的な予想物価上昇率もすでに弱含みの局面を脱し、今後、実際の価格引き上げの動きが広がるにつれて着実に上昇すると考えられます。このように2%に向けたモメンタムはしっかりと維持されております。日本銀行としてはこうした前向きの動きが持続するよう、今後とも現在の強力な金融緩和を粘り強く進め、2%の物価安定の目標の実現という課題にしっかりと取り組んでいく必要があるというふうに考えております。