ラグビー日本代表「リーチの後継者候補」 ニュージーランド出身で日本語がペラペラの24歳は何者?
ラグビー日本代表に「リーチ マイケルの後継者」となれるポテンシャルを秘めた選手が現われた。ニュージーランド出身の24歳、神戸スティーラーズ所属のFL(フランカー)ティエナン・コストリーだ。 【写真】「あの人は今」女性ラグビーレフェリー桑井亜乃さんの撮り下ろしフォトギャラリー 高校を卒業して2019年に来日した当初、コストリーは大学ラグビー界で目立った選手ではなかった。ラグビーでは全国区とは言えない岡山県のIPU・環太平洋大出身だからだ。 しかし2023年1月、卒業前のアーリーエントリーでスティーラーズに加入し、リーグワンで5試合に出場すると、一気に注目を浴びることになった。2シーズン目となった昨季は16試合に出場して12試合で先発。新人賞には選ばれなかったが、誰もが知る存在へと成長した。 「運動能力が高く、スピードとパワーを兼ね備えた選手。ブレイクダウン周りを伸ばしていけば、テストマッチで活躍できる選手になる」 コストリーの活躍は、エディー・ジョーンズHCの目にもすぐ留まり、今春、初めて日本代表に名を連ねる。 すると、6月に行なわれたイングランド代表戦でいきなり「7番」に大抜擢。桜のジャージーに腕を通すと、持ち前のスピードを武器に初キャップとは思えないプレーを見せた。 「来日する前からリーチさんの活躍を見ていたので、漠然と日本代表になりたいとは思っていました。イングランド戦はその週のベストメンバーでいったと思うので、そこに入れてうれしかった!」 ニュージーランド人の父とオーストラリア人の母を持つコストリーは、母の故郷シドニーで生まれた。父の仕事の都合で5歳からニュージーランドのオークランドに住み、ふたりの兄と一緒に楕円球を追う日々を送る。オーストラリア代表のレジェンドCTBマット・ギタウやWTBアダム=アシュリー・クーパーが好きで、将来はワラビーズの一員になることに憧れていた。
【亡き父に背中を押されて日本行きを決意】 コストリーの愛称は「タマ」。ニュージーランドの原住民・マオリ族の言語で「男の子」を意味する。ティエナンと発音しづらいため、周囲がつけたあだ名だという。 「日本では猫の名前ですが(苦笑)、言いやすいので気に入っています」 高校卒業後、兄が進学していたカンタベリー大学で勉強しながらラグビーを続けるために、カンタベリーアカデミーに入ることを望んでいた。しかしそれは叶わず、進路に悩んでいる時、高校のコーチからIPU・環太平洋大学への留学を打診された。 海外に行く選択は、当初コストリーの頭になかった。 「その時は日本語ができなかったので。ただ、インターネットで中国地区大学リーグを見ると(IPU・環太平洋大が)すごい点差で勝っていたので、強いチームと思っていました」 ただ、父のスティーブンがALS(筋萎縮性側索硬化症)に罹患しており、来日するかどうか本当に悩んだという。しかし、父に「自分のせいでやりたいことや夢を掴むことができなかったらすごく申し訳ないので、日本に行ってほしい」と言われて、覚悟を決めた。父は来日1年目、帰らぬ人となった。 「お父さんは天国から見てくれている。すごく彼のことを感じます。代表初キャップなど大切な時、よくお父さんのことを考えます。生きていたらすごく喜んでくれたと思います」 コストリーが来日した2019年当時、IPU・環太平洋大は大学選手権に出場できるレベルではなく、明治大などでヘッドコーチを務めた小村淳監督が就任し、強化を始めたばかりだった。 コストリーは当時をこう振り返る。 「初めて日本に来た時は、みんな真面目で強いなと思った。だけど、天理大学と試合をして大差で負けて、どういう立場にいるか理解しました。 小村監督は(ライバルの)朝日大学に勝って大学選手権に出るため、私を日本に呼んだ。1年生の時は(朝日大相手に)5-55でしたが、翌年は10-29、その次は7-14とちょっとずつ近づき、4年生の最後に30-28で勝って(大学選手権に初めて出場できて)本当によかった」
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