溢れる破壊と殺戮 足りない日常生活品 --- 写真家・鈴木雄介氏が見たシリア
もう2年以上もの間、中東の国シリアで内戦が続いています。死者は10万人を超え、国外に逃れた難民は180万人とも言われます。2013年1月7日、フォトグラファーの鈴木雄介さんは、自らが活動拠点としているニューヨークからトルコ首都のイスタンブールなどを経由して、「自由シリア軍」のメンバーと一緒にシリアに入りました。鈴木さんが紛争地に赴こうとしたきっかけ、そして2週間の滞在期間中に見たシリアの現状を語っていただきました。
当たり前だと思っていた日本の平和
9.11以降のアフガニスタン、イラク侵攻を見て、当時高校生だった自分は「戦争とは一体なんなのか」という素朴な疑問を持っていました。 テレビや新聞を見てもそこからリアリティは伝わってこず、日本も当時の小泉首相がいち早くブッシュ政権に賛同の意思を示したり、自衛隊をサマワに派遣したりと関わっていたにもかかわらず、まったく別の世界の出来事でした。 「戦争状態にある国に行って自分の目で何が起こっているのかを見たい」という想いから、2006年に写真を始めるきっかけとなったアフガニスタンに行き、人々の置かれた状況を見てそれまで音楽学校の生徒だった自分の人生が完全に変わりました。 それまで当たり前だと思っていた日本社会の平和さや、日常生活の隅々までのことが当たり前ではなく、類を見ないほど恵まれていてラッキーだということに気がつきました。 自分が見てきた物事を人に伝え、世界の人々がどんなに過酷な状態に生きているのかというのを知ってもらい、自分たちの生き方や日常を考え直すきっかけとして、また困難な状況に生きる人たちの状況をすこしでも好転させるきっかけになればと思い写真家を志すようになりました。 写真家として30歳までに紛争地域に行くという目標があったのと、アラブの春の動きを見てこの歴史に残るであろう出来事を自分の目で見て体感し、自分の持っている技術でそれを記録したいと思いました。