426kmの航続距離は印象的 BYDドルフィン・コンフォートへ試乗 未完成な部分もチラホラ
動力性能に不満なし 運転の楽しさは高くない
今回は複数のドルフィンへ試乗したが、ブースト・グレードのフロントに載る149psの駆動用モーターは、このクラスのハッチバックへ期待通りのパワー感。アクセルペダルを急に踏むと、フロントタイヤが受け止めきれない瞬間はあるが。 コンフォートとデザインには、アット3と同じ203psのモーターが載る。同じ馬力でも車重が軽いため、ドルフィンの方が走りは軽快。0-100km/h加速は7.0秒でこなす。そのかわり、フロントタイヤのトラクションが失われる場面も多くなる。 カーブで積極的にアクセルペダルへ力を込めると、トラクション・コントロールがしばしば介入する。だが、アット3よりトルクステアは小さい。余程気張って運転しない限り、マナーが乱れることはないはず。 アクセルオフ時の回生ブレーキは、最も強い状態にしても効きは弱め。ブレーキペダルの感触は柔らかく、どの程度踏むべきか判断が少し難しいと感じた。 乗り心地は、リンロン・コンフォートマスター・タイヤのサイドウォールが薄いこともあり、細かな入力の吸収性はさほど良くない。流れの速い幹線道路では、舗装の剥がれた穴や隆起部分で安定性へ影響が出てしまう。 ステアリングホイールは軽く回せるが、情報量は希薄。高速道路で不安を感じるほどではないものの、反応はおっとり気味だ。 サスペンションはソフト指向だから、姿勢制御はタイトではない。カーブの途中にある凹凸は苦手といえ、若干の浮遊感を伴う。運転の楽しさは期待しない方が良いだろう。
装備充実 英国ではMG 4をコスパで超えない
英国仕様の装備は充実しており、すべてのグレードで高効率なヒートポンプ式エアコンと、360度カメラ、アダプティブ・クルーズコントロールを含む運転支援システムが備わる。駆動用バッテリーからの給電機能も付いてくる。 新車保証は、最大6年間か15万kmまで対応。パワートレインは、8年間か20万kmまで保証される。ただし、英国にはMG 4という強敵がいる。価格は近似し、航続距離はより長いのだ。 かくして、この価格で426kmの航続距離は印象的なものながら、ドルフィンの競争力は、そこまで高いとはいえないだろう。普段使いの走りは悪くなく、車内は居心地が良いものの、未完成な部分もチラホラ存在する。 制限速度の範囲内なら、市街地でも高速道路でも運転はしやすい。実用性も低くない。しかし、車載技術やインテリアの質感、運転体験などは期待に届いていない。英国の場合、総合的なコスパでMG 4を超えてはいない。 ◯:ソフト指向なサスペンション 広々としていて実用的な車内 低価格の割に航続距離が長い △:インフォテイメント・システムのユーザーインターフェース 車内の科学的な匂い やや落ち着かない乗り心地 おっとり気味のステアリング
BYDドルフィン・コンフォート(英国仕様)のスペック
英国価格:3万195ポンド(約579万円) 全長:4290mm 全幅:1770mm 全高:1570mm 最高速度:160km/h 0-100km/h加速:7.0秒 航続距離:426km 電費:7.0km/kWh CO2排出量:- 車両重量:1658kg パワートレイン:AC非同期モーター 駆動用バッテリー:60.4kWh 急速充電能力:88kW 最高出力:203ps 最大トルク:29.5kg-m ギアボックス:1速リダクション(前輪駆動)
サム・フィリップス(執筆) 中嶋健治(翻訳)