監督キティ・グリーンにインタビュー、来週公開の映画『ロイヤルホテル』について描きたかったのは“自覚なき差別”
焦点を当てたのは、「自覚なき差別」
──パブで女性を中心に侮辱するような言動が向けられることの根底にはどんな問題があると思いますか? 最初は小さいジョークから始まり、それが問題にならないと、もっと下品なジョークになってという風に悪化していく。『ロイヤルホテル』ではマイクロアグレッション(自覚なき差別)を描きたかったのです。早い段階で「NO」と伝えていれば、やがて起こってしまう性的な暴力は生まれなかったかもしれない。Xで止めておけばYに行かなかったのにというようなことを指摘したかったのです。片田舎のパブは男社会であり、とても閉鎖的です。そういった場所で夜中までお酒を飲んでいる内に女性へのハラスメントが激しくなっていくということはどの国でも決して珍しいことではないと思っています。 ──『Hotel Coolgardie(原題)』の主人公はフィンランド人でしたが、『ロイヤルホテル』の主人公をカナダ人にしたのはなぜですか? 最初はスカンジナビアの地域に住んでいる主人公にしたかったんですが、アメリカ人からするとスカンジナビアの主人公の映画だと外国映画だと認識されてしまうので、資金が集まりにくいのです。そして、アメリカ人は自分のことをアメリカ人だとは言いたがらない。そこで、カナダ人にすることでアメリカ人に親近感を持ってもらえて資金が集まりました。また、この映画は派手なアクションや激しいバイオレンスがあるわけではないということも資金が集まり辛かった理由のひとつです。 ──国や環境にある文化の違いも描かれていますが、参考にした出来事やエピソードはあったんでしょうか? 私は6年間ニューヨークに住んだことがあるので、アメリカの女性がオーストラリアの片田舎に行った時にどういう風に混乱するかはすんなりと想像ができました。特に興味深かったのは『ロイヤルホテル』をオーストラリアで上映すると、片田舎の寂れたパブで働くというシチュエーションに対して「そんなに悪くない。楽しめるんじゃないかな」という反応があった。つまり、映画の登場人物でいうとリブのような反応でした。一方、アメリカで上映すると「あんなところで働くのはすごく怖い」というハンナのような反応が上がったことです。