TemuやSHEINなど中国発・格安通販のユーザー層、何とも意外な実態…都道府県別の通販アプリ利用率ランキングを調査した結果
リアル店舗へのアクセスの問題や、県民の平均的所得など複数の要因が考えられるが、利用率が高い地域と低い地域では2倍以上の開きがあり、普及のスピードに大きな地域差があることも特徴として浮き彫りになった。 また、Temuの利用率が最も高い沖縄県では、楽天市場、UNIQLOの利用率が最も低かったというのも興味深い結果だ。アプリ利用者の性年代の分析においては、Temuは楽天市場やUNIQLOと利用者層が近いことがわかった。利用者層が近い分、これらのサービスの間の競合関係が強いことがうかがえる。
従来ある通販アプリに着目すると、プロ野球チームが本拠地を置く宮城県で楽天市場の利用率が最も高かったのを別とすれば、Amazon、UNIQLO、ZOZOTOWNはいずれも東京の利用率が最も高かった。商業が密集する東京では、リアル店舗での買い物の利便性も高いはずだが、むしろリアル店舗の存在がネット通販での購買意欲も刺激していることがうかがえる。 一方で、東京のTemuの利用率は46位、SHEINの利用率は44位と低かった。比較的所得も高く、リアル店舗も充実した東京には、格安通販の入り込む余地が比較的小さいのかもしれない。
■中国通販の影響は避けられない国産サービス 本稿では、スマートフォンのアプリログデータを用いてネット通販サービスの利用を分析し、近年急速に普及した中国発の格安通販の国内での影響を考察した。成長が著しいTemuやSHEINと利用者層が近いのは、Amazonよりも楽天市場やZOZOTOWNといった国産の通販サービスだった。 品質や人権問題についての報道、また米中関係等が要因となり、今後中国発の格安通販の勢いが強まるのか弱まるのかは不透明だが、どちらの場合でも国産の通販サービスへの影響は避けられないだろう。
「中国発の格安通販」といっても、それぞれ異なるターゲットに普及しており、また地域ごとに利用率に大きな開きがあった。本稿で挙げた通販サービスに限らず、国内の通販事業者は中国発の格安通販の今後の動きを注視するとともに、自社や競合のサービスの利用状況の解像度を上げて対策を検討する必要があるだろう。 *di-PiNKは株式会社ドコモ・インサイトマーケティングの登録商標
山津 貴之 :インテージ メディアアナリスト