「玉川徹氏」と「SNSインフルエンサー」の3つの共通点
「第1に一貫した反官僚主義、第2に信念と視聴率の折り合い、第3に野党気質である」 第1の特徴を示す実例は、玉川氏の「出世作」ともいうべき「公務員宿舎問題」だ。公務員宿舎が港区青山のような高級住宅街にあり、なおかつ格安の家賃というのはおかしいではないか。そんな問題意識から彼がレポーターを務める番組「スーパーモーニング」は「南青山住宅」をターゲットに絞って取材を重ねる。 「そこで生まれたのが、テレ朝スタッフの間で今も『伝説のショット』と語り継がれる名場面だ。 2003年である。リポーター業も板についてきた玉川が、公務員宿舎の前で出てくる官僚に片っ端から声をかけて回った。その中に、声をかける前から全速力で走って取材を振り切った官僚がいた。玉川も玉川で『7万円ぐらいで住んでいるのはどういう気持ちですか?』などと問いかけながら、全力で追いかけていった。その姿をカメラマンも走りながら撮る。何も答えないが、官僚にもどこか後ろめたいものがあるのだろうと思わせる強い主張のあるショットが撮れていた。 時に、映像は言葉以上に文脈を雄弁に伝えるツールになる。現場で得た実感をスタジオに持ち込み、熱のこもった口調で怒りをつけくわえれば強力な特集が出来上がっていく。玉川は著書の中で、官僚を『ウイルス』やがん細胞に喩(たと)えている。ウイルス最大の悪行である『無駄遣い』を検証し、視聴者に投げかける──。玉川の基本的なスタンスと闘い方は約20年前には完成していた。一連の官僚批判は大きな反響を呼び、玉川は一つのポジションを確立した」 言うまでもなく、この手法は今日、YouTuberが実践しているものの原型ともいえる。「敵」を設定して突撃。相手の狼狽、失言を撮影してそのまま世に流す。見る側にその様子から何らかのネガティブな感情を喚起させる。
数字と事実にこだわる
第2の特徴の「信念と視聴率の折り合い」とは何か。紹介されているのは、「チーム玉川」のミーティングなどで玉川氏が繰り返していた二つの言葉だ。 「数字を取ること」と「事実だけは間違えるな」である。 「『自分は数字が取れなくなったら、すぐに地位を追われる』と玉川は周囲に語り、番組の平均視聴率ではなく、自身が担当するコーナー視聴率を特に気にかけていた。分単位でグラフ化される数字を意識して、自分がやりたいことをやり、かつ視聴者に響くにはどうしたらいいかを考える」 むろん事実を押さえつつ、数字を取るというのはテレビマンとして真っ当な姿勢である。しかしこれもまた「再生回数やPV(ページビュー)を狙う」という行為とどこが違うのかというツッコミは今日、避けられないかもしれない。フェイクと知りながら情報を拡散する者もいるが、一方で自らが伝えていることこそ真実であると確信を持って発信や配信をしている人も多くいるのだ。