【選手コメント全掲載】“準決勝の壁”を破壊した車いすラグビー日本 金メダルへの道「最後は神様が決める」
■池崎大輔(46)
──(池選手と)二人は東京大会までも一緒にやってきました。 やっと自分たちが目標としている舞台に明日立てる。その舞台で、今までやってきたことを出し切る。自分達らしいラグビーをする。それに尽きます。あとは、予選から準決勝までの4試合を通して、日本チームは一戦一戦で強くなって成長してきたので、明日の決勝の舞台でみんなで喜びたいと思ってます。 ──同点に追いついた第4ピリオドについては。 エンドラインで(オーストラリアの選手の)ボンドとライリーを攻めて、ターンオーバーを取って、とりあえず同点にするつもりでした。そうするとボールが自分たちのところに来て、それをしっかりスコアにできて、延長になった。そこは自分たちの粘り勝ちで、気持ちの強さが実を結んだのかなと思います。 ──そこで流れが変わりましたか? 勢いがこっちに来ている感じはありました。 ──延長入る時は、日本に流れが来ていると感じていましたか? 流れはたぶん、延長戦に入る前に1回切れたと思います。池がしっかりタップを取ってくれて、そのアドバンテージから入れた。そこから日本の勢いがついてきたと思います。勢いは自分たちで作る。流れは自分たちで作るもの。それができたと思います。 ──日本チームにミスがありました。 みんなミスはします(笑)。でも、今回の僕は、ミスをしても気持ちはぶれてない。 ──明日の意気込みは。 明日、見てください。自分たちは何のために来てるのか、みなさん知ってますよね。明日の日本チームの試合、瞬きしないで見ておいてください。
■橋本勝也(22)
準決勝が始まる前、控え室で池崎選手から、耳元でこそっと「頼んだ」と言葉をかけられました。その瞬間に、東京大会のいろんなことが蘇ってきて、フラッシュバックして、すごい吐きそうでした(笑)。 でも、自分たちが今まで東京から約3年間磨き上げてきたものってこれだよな。そう思いながらプレーをしている中で、今日は延長戦に入るまでは自分自身に硬さがあったのかなと。やはり、「準決勝の壁」はなるべく感じないようにしようと心がけていた中でも、頭の片隅にどこかであって、余計なことを考えてしまったがゆえに、最初はプレーが硬かった。 第4ピリオドまでは自分たちの流れがつかめなかった中で、延長戦に何とか入ることができた。まさか(自分が)スタートから出るとは思ってなかったけど、本当にスタートで出ると言われたとき、さらに吐きそうになりました(笑)。 ただ、そのときに倉橋選手を見たらすごい笑顔で、それを見て肩の力がすっと抜けたなと。今日の試合は正直、自分自身は硬かったけど、倉橋選手を見て肩の力がすっと抜けました。 予選の3試合はずっとこんな感じでやってきたな。エンジョイ・ラグビーと言ったらおかしいですけど、「楽しむ」をモットーにやってきた。それは、ケビン前監督からも「ハブ・ファン」と言葉をかけられていたよなと。いろんなものがフラッシュバックして、自分らしいプレーが最後の最後でできたのかなと思ってます。 ──試合が終わってから池さんと抱き合って、泣いているように見えました。 そうですね。やはり、東京大会の準決勝。本当に何もできずに終わってしまった。当時は、「何のために俺ここにいるんだろう」と考えていて、早く選手村を出て、地元に帰ってトレーニングしたいなっていう思いがありました。それが、今日の試合は今大会の鍵になるなと思っていた中で、最後の最後、自分がコート上で勝利の瞬間を迎えることができた。その意味で、今までやってきたことが間違っていない部分もあるのかなと。 最後の最後は、本当に明日が、そういったものをすべて証明すると思っているので、(今日は)泣くのが早かったかもしれないですけど、いろいろ考えていると、感じるものがありました。 ───オーストラリアのエースのライリーに押され気味でした。 彼は経験があるので狙っているのはわかっていたんですけど、池さんと一緒にクロスをするのか、スペースを取って勝負させるのかなど、そういった細かい部分のズレがミスにつながったのかなと。あとはタイムアウトを取る判断が、自分の中では鈍ってしまっていた。そういった一瞬の判断が、決勝では命取りになると思うので、しっかりと備えたいです。 ──ライリーとの競り合いはどうでしたか? 今だから言いますけど、本当に楽しかったです。自分が目標としていた選手の1人であるライリー選手と対峙をすることができた。止めることができたり、抜くことができたという部分で、本当に嬉しかったです。その一方で、自分がここまで上がってこられたのは、本当にライリー選手の存在のおかげです。負ける気はサラサラなかったですし、むしろイライラさせて、ストレスをためさせて、自分たちの流れを作っていこうと思いながらプレーをしていました。 ──勝利の瞬間はどんなことを思いましたか? ここまできたなと。自分たちが目指していたものは金メダル。そして、個人的にはパリ・パラリンピックで決勝の舞台に立って、金メダルを取るためのキープレーヤーになる。その目標を掲げてこの3年間、福島と東京を毎週のように行ったり来たりして。移動時間の方が長いときもあったけど、でもそれ以上に得られるものがすごくあった。今は良い環境があるからこそ、自分たちはここまで来ることができたと思っています。最後、勝利できて本当にほっとしました。 ──キープレーヤーになる予行練習は、今日できたのでは? どうでしょうね。自分自身は目の前の1試合1試合、その瞬間の一つ一つのプレーを大切に今までやってきました。4人でコミュニケーションを取ってツーオンする、あるいはワンオーワンで仕掛ける。そういった判断を瞬時にやる。明日は苦しい展開になることは間違いないとは思うんですけど、その中でも自分たちらしいプレーをして、ディフェンスで世界一を取り、みんなと一緒に国家を歌いたいなと思います。 ──明日はどういうチームで試合をしたいですか。 今のチームメイトは本当に最高だと思っています。ふざける人もいれば真面目な人もいて、オン・オフがちゃんとはっきりしている。それをキャプテンがまとめてくれている。だからこそ、今のチームは本当に雰囲気がいいのかなと。We are familyです。このチームは、僕にとっては家族のような存在です。全員で世界一のディフェンスを発揮し、金メダルを獲得して、最高の家族になれたらと思っています。