<ボクシング>山中、バンタム頂上決戦に秘策あり
防衛戦が1週間後に迫ったプロボクシングのWBC世界バンタム級王者の山中慎介(32歳、帝拳)が14日、都内の帝拳ジムで公開スパーリングを行った。山中は、9月22日に大田区総合体育館で前WBA世界バンタム級のスーパー王者のアンセルモ・モレノ(30歳、パナマ)と9度目の防衛戦を行うが、モレノは12度の防衛に成功していた最強の挑戦者。事実上のバンタム頂上決戦でとなるが、山中の調子も過去最高で、フィリピンから同国のホープでWBO世界バンタム級1位にランクされているマルロン・タパレス(23歳)らをパートナーに迎え、過去最長の150ラウンドのスパーを消化してきた。そして山中は、モレノを返り討ちにする秘策を完成させたという。
『仮想モレノ』 右のガードをやや下げてL字に構えるモレノのサウスポースタイルを練習台のタパレスが貫く。「モレノのビデオを見てスタイルを研究して真似たんだ」。山中は、その『仮想モレノ』の右肩に容赦なくパンチを打ち込んでいく。田中トレーナーとのミット打ちでは、名トレーナーは、器用に左のミットを背中から回して右のボディ横に置き、山中は、それを標的にした。「右肩と右ボディ」。これこそが最強と言われるモレノ打倒の秘策のひとつ。 モレノは巧みなボディワークでパンチを外していくのが特徴。右肩を打ってもダメージブローにはならないが、大きな標的である右肩と、右ボディにパンチを集めることで、リズムをつかみ、モレノの上体の動きを止め、“神の左”と言われる左ストレートの的中確率をアップさせようと考えているのだ。 山中も「何パターンかを想定して練習してきた。(左を)当てる自信はある」と言う。 この1か月、山中の練習台となってきた世界1位のタパレスは、「スタミナにパワーとパンチ力、山中は、そのすべてが凄い。おそらく前半から中盤の展開で、ボディを攻めてモレノの動きを止めて、10ラウンド以降にピンポイントで左をヒットさせて、KO勝利するだろう」と、試合結果を予告した。 モレノは2008年5月に敵地ドイツに乗り込み、ウラジミール・シドレンコからWBA世界バンタム級のベルトを奪うと、その後、12度の防衛を果たした。2012年には1階級上のWBC世界スーパーバンタム級王者、アーアブネル・マレスに挑んだが、途中、振り回されるような形でダウンを喫するなどインファイトに巻き込まれ、体力差でバテバテになって判定負け。 2014年には、ファン・カルロス・パヤノに不運な6回負傷判定で敗れて、13度目の防衛に失敗したが、関係者の間では、「最後までやれればモレノが勝っていた」との声があるほど。元スーパー王者にふさわしい実力の持ち主だ。帝拳の浜田剛史代表も「多くの関係者が『モレノは倒せない』というほどの厄介な相手。統一戦ではないが、本当のバンタムの実力ナンバーワンを決める試合になる」と言う。 だが、その最強挑戦者の登場で、山中のモチベーションは最高潮となった。沖縄キャンプで走りこみ、150ラウンドのスパーで秘策も固めた。 そのモレノは、この日、来日。「100パーセント俺が勝つ」と、挑発発言をしたが、放映局のアナウンサーに、その発言を伝え聞くと「そう言ってもらわないと困る。今回は、ちょっとと、言われてもねえ」と、周囲の爆笑を誘った。 山中も、この試合を単なる9度目の防衛戦とは位置づけていない。 「防衛回数は忘れていたほどで、バンタムの頂上決戦の気持ちで臨む。KOがついてくればいいが、それよりも勝ちにこだわりたい。9月22日は最高の夜になる」 緊張感の漂う正真正銘のバンタム級最強ボクサー決定戦となりそうだ。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)