「世界初」厚さ0.01mmの曲げられる画像センサー、NHK技研
NHK放送技術研究所(以下、NHK技研)は2024年10月23日、「世界初」(同社)となる厚さ0.01mmで曲げられるシリコンイメージセンサーを開発し、湾曲させて動作させることで横方向のぼやけを大幅に改善した映像の撮影に成功したと発表した。2030年頃までに小型/軽量で高画質な広視野カメラの実用化を目指す。 湾曲したシリコンイメージセンサーによる収差補正の原理について[クリックで拡大] 出所:NHK放送技術研究所 NHK技研は、小型かつぼやけの少ない広視野な放送用カメラの実現を目指し、薄くて曲げられるシリコンイメージセンサーの研究を進めている。今回発表したのは、その最新の成果だ。 従来の平面構造のイメージセンサーでは撮像面と結像面にずれ(収差)が発生し、映像の周辺部でぼやけが生じる。また、撮影の視野を広げるほど、収差の影響は大きくなるため、多数のレンズを組み合わせて光を複数回屈折させることで補正をしているが、その分、カメラが大きくなってしまうという課題がある。これに対し、イメージセンサーを結像面に合わせて湾曲させることができれば、少ないレンズ枚数で収差を補正でき、広視野撮影での高画質化や、カメラの小型・軽量化が可能となる。 通常のイメージセンサーは硬く厚いシリコン基板を用いるため曲げられないが、NHK技研は今回、シリコン基板とシリコンデバイス層の間に薄い酸化膜を挿入した特殊な構造を採用。厚いシリコン基板を化学反応によって取り除くことが可能となり、厚さ0.01mmのシリコンイメージセンサー(320×240画素)を実現したという。 開発したイメージセンサーは、最大で曲率半径10mmの円筒状まで湾曲させても撮影可能。湾曲していない平面構造のイメージセンサーと比較し、横方向の収差が大幅に改善することも確認したという。 NHK技研は今後、同イメージセンサーのカラー化および、縦横両方向の収差改善に向け、凹面状に湾曲したイメージセンサーの作製技術を確立し、2030年頃までに小型/軽量で高画質な広視野カメラの実用化を目指すとしている。
EE Times Japan