なぜ大荒れとなったMGCで“伏兵”中村匠吾が勝てたのか?
その原因は設楽の飛び出しにあった。 「設楽選手についていこうかなと思ったんですけど、他の選手がいかなかったので、つきませんでした」と大迫。その判断は間違っていなかったが、設楽の姿が遠くなるにつれて心の余裕が奪われた。実は中村も設楽につくか迷っていたという。 「悠太さんが出たところで、誰かついていくのかなと様子を見ていたんです。でも集団から42kmを通して勝負しようという意思を感じたので、自分もその流れに乗って後半勝負を考えました」 それは昨年12月の福岡国際マラソンで14年ぶりの日本人Vに輝いた服部勇馬(25、トヨタ自動車)も同じ気持ちだった。有力選手が誰も追随しなかったことで、設楽が独走となり、残り29名が2位集団を形成することになる。 集団は5km15分台後半のスローペースで進むと、15km過ぎに鈴木健吾(24、富士通)がアタック。大迫、中村、服部が反応して、4人は20kmまでの5kmを14分47秒という高速ラップを刻んだ。しかし、その後は押し切ることができず、藤本拓(30、トヨタ自動車)、橋本崚(25、GMOアスリーツ)、大塚祥平(25、九電工)、中本健太郎(36、安川電機)、竹ノ内佳樹(27、NTT西日本)に追いつかれた。 前を走る設楽の姿がグングン近づき、35kmを9人の選手が一団で通過すると、「2位以内」をかけた戦いが本格化した。36km付近からゴールまでは高低差で30mほど上る。明らかなスパートを放つ選手はいなかったものの、トップ集団は徐々に削られていく。 中村も38km付近で嘔吐して、状態が心配されたが、「お腹がきつかったんですけど逆に楽になった」と残り3kmで強烈スパート。服部と大迫が必死で追いかけて優勝争いは3人に絞られた。3番手となった大迫は、40.8km付近で服部をかわして、40.9km付近で中村に並ぶ。このままトップを駆け抜けるかと思われたが、中村はまだ力をためていた。 「大迫選手に追いつかれたときは、焦りもあったんですけど、前日の試走でラスト800mに上り坂があったので、そこが間違いなくポイントになると考えていました。うまく余力を残しながら、上りで仕掛けることができたので、予定通りのレースができたかなと思います」 中村は残り1kmを切り、上り坂で再スパート。大迫を突き放して、真っ先に神宮外苑の銀杏並木に飛び込んできた。優勝タイムは2時間11分28秒。ラストの2.195kmはキロ2分52秒ペースの6分18秒で走破した。