歩くだけで体幹と足裏を鍛える「ベアフットシューズ」3選。靴を“ハダシ”に近づける
こんにちは、シューフィッターこまつです。靴の設計、リペア、フィッティングの経験と知識を生かし、革靴からスニーカーまで、知られざる靴のイロハをみなさまにお伝えしていこうと思います。 ⇒【写真】究極のベアフットシューズ
薄底ベアフットがケガを防ぐ秘密
自然に体を鍛えるための靴「ベアフットシューズ」をご存じでしょうか? 靴底は最小限の薄さしかなく、裸足に限りなく近い状態で、地面からの衝撃を体全体で吸収することで、体幹が自ずと鍛えられてケガが減ると言われています。地面がつかみやすく、体のコントロールが効くことは、地下足袋を連想するとよくわかるはず。その昔、東京タワーを建てたとび職の方たちが、命綱もなしにひょいひょい数100メートルの高さの上で作業をして、外国人の方たちの度肝を抜いたそうです。足裏の神経や筋肉、全身の体幹のバランス感がなければ、到底不可能な技術です。こうしたいわば「裸足の力」を呼び覚ますための靴が「ベアフット(裸足)シューズ」というわけです。健康意識への高まりからにブームが静かに再燃しています。 アスリートをはじめ、ケガに悩まされている方はぜひ知っておいてもらいたい靴です。最近は、HOKAのように厚底で究極のクッションを使って膝を守るという考え方が流行っていますが、ベアフットシューズはその対極で「攻め」に特化したスタイルと言えます。
ベアフットの元祖は20年続くナイキ「フリー」
ベアフットシューズを語るうえで欠かせないのが、ナイキの「フリー」シリーズ。ハイテクの最先端のナイキが20年以上もつくり続けているシリーズです。 底の厚みはほとんどなく、エアが入っているわけでもありません。まさにスパルタ。こちらは開発当初の設計図ですが、足の動きをこれでもかと研究しています。 さわると底がグネグネと自由自在に動きます。靴というよりは、ソックスに薄い底がついているという表現が近いでしょう。ナイキも開発当初は製品化を考えていなかった、とのちに発表しています。もともとナイキはマラソン選手のスポンサーとして、当時ケニアをはじめとするアフリカ勢を育てていたのですが、まずケガが極端に少ないことに驚きます。選手をスカウトし、アメリカでランニングシューズを履いてトレーニングしても、練習後のクールダウンには靴を脱いでしまうという事実を無視できなかったナイキが、うっすら「そんなバカな」と思いつつも出来上がったのが「フリー」シリーズなのです。 履いたときの第一印象は「心もとない」です。本当にこれで歩いていいんだろうかとやや不安になります。アッパーと呼ばれる足を覆う部分も、カカトの芯も入っておらず、甲もピタピタでまるでボクシングシューズかマリンシューズを履いているかのような感触です。 「フリー」を履くと、はじめの数日は筋肉痛を起こします。指先から体幹まで、普段使わない筋肉を強制的に使う好転反応です。フリーは20年以上の歴史があるとは言っても、実はいい意味でほとんど進化はしていません。裸足に近ければそれで良いのでアップデートの必要がないのです。