【キーンランドC】8歳馬タニノマティーニ「161.4倍」の一撃 北の大地を熱くする電撃戦を「記録」で振り返る
2005年まではハンデ戦、2006年から別定戦へ
今週はキーンランドCが開催される。2005年まではハンデ戦、2006年からは別定戦として開催されている北のスプリント戦。過去にはワンカラットやカレンチャン、ナックビーナスといった牝馬が勝利してきた。 【札幌記念2024 推奨馬】勝率50%&複勝率100%の鉄板データを持つ!実力は日本トップレベル SPAIA編集部の推奨馬を紹介(SPAIA) 一方の牡馬もビービーガルダンやパドトロワ、ダノンスマッシュなど、その時々のスプリント界を牽引する馬たちが勝利をあげている。今回はそんなキーンランドCの記録を振り返る。 まずはハンデ戦時代の斤量に注目。勝ち馬の中で斤量が重かった順に並べると、2位は57.5kgのロードダルメシアン(2004年)。1位は58kgのシンボリスウォード(1999年)となる。 ちなみに、別定戦ではダノンスマッシュ(2019年)が57kgで勝利したのが最重量となる。またロードダルメシアン、シンボリスウォード、ダノンスマッシュの3頭は1番人気で勝利している。 58kgをものともせず勝利したシンボリスウォードは、父Green Desert、母父Kenmareという血統。マル外として同世代にはグラスワンダーやエルコンドルパサー、マイネルラヴやアグネスワールドがいるように、「マル外全盛」とも言える時代だった。シンボリスウォード自身はデビューから2連勝するも朝日杯3歳Sで13着に敗れると、4歳シーズン(現3歳シーズン)はGⅠと無縁のまま終えた。 古馬になってからも高松宮記念で9着に敗北。北海道で態勢を立て直すべく出走したレースのひとつが当時まだ芝1000m戦のOP競走だったキーンランドCだった。前年覇者のスーパーナカヤマら骨っぽいメンバーが揃うなか、単勝1.4倍の圧倒的人気に応えたシンボリスウォード。これが現役最後の勝利となったが、引退レースのスプリンターズSではGⅠで初めての4着に入るなど、長期間にわたって活躍した。引退後は種牡馬としてJRA勝ち馬も輩出している。
レース史上唯一の単勝万馬券を出したタニノマティーニ
シンボリスウォードの単勝1.4倍は、歴代勝ち馬で最も低いオッズである。逆に単勝オッズが高い順に勝ち馬を並べると、3位は21.2倍のエポワス(2017年)、2位は29.1倍のウキヨノカゼ(2015年)、1位は161.4倍のタニノマティーニ(2008年)となる。 本レースはOP競走時代を含め、28戦中21戦が単勝1.4~9.1倍のなか、タニノマティーニは唯一の単勝万馬券を演出した。タニノマティーニといえば、デビューから5歳暮れまでの28戦にわたって須貝尚介騎手とコンビを続けた馬であった。 4歳シーズンには1番人気で3連勝するなど人気を集めることも多かったが、5歳秋にはポートアイランドSを5番人気で勝利。続く富士Sも11番人気で2着に激走するなど「波乱の立役者」として印象深い。 ソダシやゴールドシップの管理トレーナーとしても知られる須貝師にとって、騎手としての現役最後のOP競走勝利もタニノマティーニとのコンビだった。その記念すべき勝利も函館のUHB杯を8番人気で勝利という波乱の一戦だった。須貝騎手の引退後も現役を続行したタニノマティーニは、2008年のテレビ愛知OPで11番人気3着となるなど、やはり伏兵として定期的に存在感を発揮した。 そして8歳の夏、秋山真一郎騎手とのコンビで札幌のキーンランドCに出走。この年はキンシャサノキセキやビービーガルダンをはじめハイレベルなメンバー出走。メンバー最年長のタニノマティーニは4番手から積極的な競馬をみせ、逃げるビービーガルダンをとらえた。最後は上がり最速で伸びてくるキンシャサノキセキも振り切り、レース史上初となる単勝万馬券で勝利。馬連も718.8倍という大波乱を巻き起こした。タニノマティーニは8歳での勝利だったが、本レースにおける最年長勝利記録はエポワス(2017年)の9歳。上述の通り、こちらも単勝オッズ歴代3位と波乱を巻き起こした。 クーヴェルチュールやブランボヌール、レイハリアといった3歳牝馬の活躍が目立つ一方、ベテラン勢の意地も見られる一戦でもある。牝馬か、ベテランか、それとも。今年も北の大地で繰り広げられる電撃戦から目が離せない。 [あとがき] 本連載は今週から月曜17時の公開に変更となります。引き続きよろしくお願いいたします。 ライタープロフィール 緒方きしん 競馬ライター。1990年生まれ、札幌育ち。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、エアグルーヴ、ダイワスカーレット。
緒方きしん