マイナ保険証利用の患者、電子カルテを病院間で共有へ…病歴や検査結果も把握可能に
政府は、マイナンバーカードと一体化した「マイナ保険証」を利用する患者の電子カルテ情報について、医療機関同士で共有する新システムの運用を、2025年度に始める方針を固めた。既存のシステムでは確認できない過去の検査結果など詳細な情報を把握できるようになる。医療の安全性の向上や効率化につなげる狙いがある。 【図解】一目でわかる…マイナ保険証利用者の電子カルテを共有する流れ
新システムは「電子カルテ情報共有サービス」で、厚生労働省所管の法人が管理する。各医療機関から、電子カルテに記録された病名やアレルギー、感染症と生活習慣病の検査や健診結果、処方薬の情報が集まり、データベースに蓄積される。データの保存期間は3か月~5年間となる。全国の医療機関がデータを閲覧するためには、患者の同意を得る必要がある。
新システムの導入で、救急患者の症状と、データをつきあわせて診断したり、初診患者の検査結果を、過去の数値と比べて病状の変化をみたりすることが可能になる。アレルギー情報は、安全な薬の処方に役立つ。
医療機関がシステムを通じて、別の医療機関に紹介状を送る機能も備える。患者が紹介状を入手する手間が不要となる。
現在、マイナ保険証で受診する患者については、同意した上で、過去の受診歴や処方薬などの情報を確認できる別のシステムがある。ただ、何の検査を受けたかはわかっても、結果はわからないなど得られる情報は限られている。
医療機関が新システムに接続するためには、電子カルテの改修が必要となる。厚労省は運用に向けて、改修費の一部を補助している。25年初めから全国10か所で実証事業を行い、安全で有効な使い方や課題を検証。同年度中の本格稼働を目指す。
政府は、マイナ保険証の利用を基本とする仕組みへの移行を進めており、来月2日、現行の健康保険証の新規発行を停止する。医療機関や薬局でのマイナ保険証の利用率は10月時点で2割弱と低調で、利用促進が課題となっている。