職人の離職、工期の遅れ… 建設業界「2024年問題」によって何が起こる? 専門家が解説
◆現場のDX化を進める大手建設会社
ユージ:そうしたなかで、建設業界はどういった対策をとっているのでしょうか? 塚越:まず必要なのが「作業の効率化」です。例えば、大手ゼネコン「大成建設」では、カメラ画像や計測データをもとに、スマホやタブレットですぐに情報確認をおこなえるシステムを作っています。 簡単に言えば、従来は目視や伝言などで情報収集していた部分をIT化して、情報管理を徹底するというものです。デジタル管理でシフト勤務を徹底化して、残業の上限規制に対応したり、1日で100台を超える工事現場の車両を、スマホやタブレットで常時確認できるようにしています。 他にも大手ゼネコン「清水建設」では、実際に作っている建物のデータと設計データを、メタバース上(=仮想空間上)に重ね合わせて、建物を検査するシステムを開発しています。設計担当者が現場に行く回数を減らすことができ、データ上でできることが増えるので、これも仕事量を減らすことになります。 その他にも、人間の動きをサポートする装置「パワーアシストスーツ」を導入して作業を楽にしたり、ロボットや遠隔操作による作業をしたりといった最新技術の導入や、またドローンで写真撮影をおこなって設備管理をするなど、とにかくツールを使って業務効率化を目指しているようです。 ユージ:今お話しにあった建設会社はかなり大手ですが、中小企業はITツールの導入などは資金面でも厳しいですよね。 塚越:大企業は賃上げなどに対応できますが、下請け企業まで技術導入を進められるかが問われます。また、親会社に単価を上げる交渉ができるかどうかも課題です。 さらに言えば、資金面の問題もさることながら「事務作業の簡略化」でITツールを導入する、そのマニュアルを学ぶのが大変で、むしろ作業が多くなることも考えられます。 これが事務作業の「ジレンマ」で、これまでの猶予期間に対応すべきだったのですが、そこが難しかったのかなというところです。新しいものを取り込んでいく環境づくりは、どの業界でも難しい課題ですが、特に中小企業には厳しいのが現状です。