昔のままの名古屋城復元は「夢物語」 差別発言を擁護する人たちが理解していないこと
「天の声」を巡る憶測
ところで、問題の差別発言があった市民討論会を巡っては、ある憶測が飛び交っている。その発端となったのは、6月11日に名古屋市議の横井利明氏が自身のブログに書いた「突如として『天の声』で本年3月20日にバリアフリーの方針を撤回」という文章。続けて「市長の指示書に従って事務を進めていた担当者は、(中略)大混乱に陥った」とも書かれている。「天の声」とは「市長命令」ということだ。6月12日の有識者会議で名古屋市は「そう決定しているわけではない」と横井氏のブログを否定したが、12日の会議に間に合わせるかのように5月にアンケートを取り、6月3日に市民討論会を開いたという流れを踏まえて、「どうしてもEVをつけたくない河村市長が、『市民からもEVなし復元に賛意を得られた』という実績をつくれば思い通りに事業を進めることができると考え、このようなスケジュールでアンケートや市民討論会を開いたのだ」と疑う声が出ているのだ。もし、この憶測が本当だったとしたら、討論会参加者のひどい差別発言によって真逆の状況となったのは、河村市長にとって誤算だったかもしれない。 ただ、憶測の真偽がどうであれ、こうなった以上、どういう城が造られるのかを名古屋市民がもっとよく知った上で、もう一度木造再建を考え直すときなのではないか。12日の会議にオブザーバーとして出席した文化庁の平澤毅文化財調査官は、「現在のコンクリート天守にも歴史と文化が刻まれている」と発言している。築64年のコンクリート天守を耐震補強して残せば、新築木造天守よりずっと早く文化財として認定されることになるだろう。ちなみにそれであれば15億円ほどで可能である、との試算がすでに出ていることを付記しておきたい。