「曲がる太陽電池」ノーベル賞の期待もかかる日本発技術の驚くべき実力とは 海外は早くも量産化競争、日本が取るべき方策は?
太陽光発電を巡っては、日本は苦い経験がある。シリコン型は2000年代に三洋電機(現パナソニックHD)やシャープ、京セラなどが世界シェアの上位を占めたが、その後中国勢が圧倒的な巨額投資で市場を席巻し、日本企業は敗れ去った。 調査会社の富士経済によると、ペロブスカイト型の世界市場規模は2035年に1兆円に達する見通し。海外勢ではポーランドの「サウレ・テクノロジーズ」が2021年に工場を開設。中国の「大正微納科技」も2022年に大型パネルの生産を始めており、実用化で日本勢は先を越されつつある。 国際競争に勝ち抜くため、政府も支援に本腰を入れる。岸田文雄首相は4月「日本が強みを持つ技術、材料を生かし、早期の社会実装を目指す」と表明。8月には開発支援額を648億円に増やす方針を決めた。 政府はエネルギー安全保障の観点からも注目している。ペロブスカイト型の主原料であるヨウ素は日本が世界2位の生産国で安定調達が見込めるためだ。従来型の主原料である結晶シリコンは中国が主産地で、国際情勢によって供給が不安定になる恐れがある。
日本発の技術でも、フラッシュメモリーのように他国にシェアを奪われた事例はバブル崩壊後の日本の産業界で日常化した。ペロブスカイト型太陽電池でも同じ轍を踏むのか、日本の本気度が試されそうだ。 ▽開発者「日本勢は中国に勝てる」、メーカーの投資がカギ 開発者の宮坂力・桐蔭横浜大特任教授に、今後の展望を聞いた。 ―国産化が期待されている。 「原料が日本産で安いため、製品も国内で作りたい。フィルム印刷後に結晶ができる反応を制御するのが非常に難しいが、日本企業はこの技術に強みがあり、中国に勝てると思う。」 ―実用化は中国が早そうだ。 「中国政府や個人による巨額投資が背景だ。基礎研究よりも先に生産設備を造って、良品比率や売り上げの見通しが不透明なうちから商品にしている。作りながら変えていくスピード感がある」 ―日本企業の課題は。 「企業が収益や価格競争力を出すには1ギガワット以上の大量生産が必要だ。積水化学工業や東芝、カネカなどのメーカーがそれだけの投資を販売前からできるのか。決断は難しく、政府が初期投資を支援する必要がある」