「曲がる太陽電池」ノーベル賞の期待もかかる日本発技術の驚くべき実力とは 海外は早くも量産化競争、日本が取るべき方策は?
この薄さがペロブスカイト型の最大の魅力で、ビルの壁面など従来では無理だった場所に設置でき、太陽電池の爆発的な普及が期待されている。シリコン型は普及が進むにつれ景観や安全性を巡って地域住民の反発を招くこともあったが、そうした課題を解決する可能性がある。ペロブスカイトを溶かした溶液を塗って乾燥させれば簡単に薄膜がつくれるため、印刷技術で電池がつくれるのも魅力だ。 もう一つの強みはわずかな光でも発電できることだ。宮坂氏は「シリコン型は早朝や夕方に発電できず、悪天候にも弱い。ペロブスカイト型はそうした時間帯も発電できる」と利点を語る。課題は発電効率が従来のシリコン型にはまだ追いついておらず、薄い故に耐久性には難がある点だ。 ▽トヨタはEV搭載を構想、パナソニックや積水化学、ベンチャーも参戦 国内では、積水化学工業がペロブスカイト型の2025年実用化を目指し、東京都の下水処理施設で実証実験に着手。発電状況や耐久性を検証中だ。2025年大阪・関西万博でも照明用電力として活用する。耐久性についても、積水化学はこれまでの研究開発で耐用年数を10年相当まで高め、フィルムをロール状にして加工する量産技術も確立した。
パナソニックホールディングス(HD)は、ガラス建材とペロブスカイト型の発電膜を一体化させた「発電するガラス」を開発。8月から神奈川県藤沢市の「藤沢サスティナブル・スマートタウン」の住宅バルコニーに設置して実証実験を始めた。2028年までに実用化する。 トヨタ自動車とタッグを組み、EVへの搭載を目指しているのが、京都大発ベンチャーのエネコートテクノロジーズ(京都府久御山町)だ。トヨタは現在、「プリウス」のプラグインハイブリッド車(PHV)でシリコン型太陽電池を屋根に付けるオプションを提供している。年間約1200キロメートル走行分の電力を生み出すという。 ペロブスカイト型にするとボンネットやドアにも貼れる可能性がある。エネコートの加藤尚哉社長は「パネルの出力も高めて発電量をシリコン型の数倍に増やしたい」と意気込む。近距離だけの「街乗り」なら、ほぼ充電不要になる計算だ。 ▽シリコン型で敗北した日本勢、実用化で先行する海外に政府支援で巻き返しなるか