伊勢﨑賢治×柳澤協二「"戦争の終わらせ方"なんて本当にあるの? あるなら、どうして終わらないの?」
侵攻開始から3年目に入っても泥沼の戦闘が続くロシア・ウクライナ戦争。たった5ヵ月で3万人以上が犠牲になったイスラエル・ハマス戦争。 【写真】伊勢﨑賢治氏×柳澤協二氏 テレビも、新聞も、ネットでも、戦争のニュースを目にすることが、もはや日常になっているが、なぜ誰も戦争を止められないのか? そもそも、戦争を止める方法なんて本当にあるのだろうか? 紛争解決請負人、東京外国語大学名誉教授・伊勢﨑賢治氏、元内閣官房副長官補・防衛庁防衛研究所所長の柳澤協二氏、「戦争と平和」問題の最前線を走ってきた専門家ふたりの答えとは。 ■「戦争」は無理でも、「戦闘」は止められる ――3年目を迎えたロシア・ウクライナ戦争も、連日、多くのパレスチナ人が犠牲になっているイスラエル・ハマス戦争もいっこうに終わる兆しがありません。なぜ、戦争は止められないのでしょうか? 柳澤 戦争というものは「やられたら、やり返す」の繰り返しですから、始まってしまったら簡単には止められない性質のものなんです。 そうなると基本的に「一方が勝利して相手を完全に打ち負かす」か、あるいは「双方が疲れ果てて戦争が続けられない状態になる」という2種類の終わり方しかなくて、お互いに「まだ戦える」とか「戦い続けることに意味がある」と考えている間は、基本的に戦争は終わりません。 しかも、戦争の"勝ち負け"というのも単純ではありません。例えば、ロシア・ウクライナ戦争では、多くの人がウクライナの勝利を望んでいると思いますが、実は具体的に「何をもって、ウクライナの勝利と考えるのか」は明確ではない。 もともと、ロシアとウクライナでは国力や軍事力に大きな差がありますから、現実的に考えて「ウクライナがロシアを完全に打ち負かしてモスクワまで攻め上がる」ということはありえないでしょう。 では、侵攻が始まった2022年2月時点の国境までロシア軍を追い返せばウクライナの勝利なのか? それとも、ゼレンスキー大統領が言っているように、2014年にロシアが奪い取ったクリミア半島の奪還までを実現することが勝利なのか? それに、仮にウクライナがロシア軍を追い返して領土を奪還できても、それでウクライナの安全が保障されるわけではなく、ロシアがそれに納得できなければ、当然、戦争は続くかもしれないのです。