伊勢﨑賢治×柳澤協二「"戦争の終わらせ方"なんて本当にあるの? あるなら、どうして終わらないの?」
――イスラエルの後ろ盾であるアメリカはガザでの戦争を止めたくないのでしょうか? 伊勢﨑 いや、アメリカでも軍の関係者など、戦争を知るプロたちは、なんとか止めなければならないと真剣に思っているはずです。なぜなら、彼らは20年にも及んだアフガニスタンでの戦いでタリバンに敗走した苦い経験から、ハマスとの戦いが終わりのない泥沼になることを痛いほど理解しているからです。 柳澤 それはイスラエルにも言えることで、彼らは自衛権の行使だとしてガザへの攻撃を続けているけれど、現実には、そうしてイスラエルが多くのパレスチナ人を殺戮するほど、イスラエルに対する怒りや憎しみを持つ人が増えて、それが逆にイスラエルの安全保障を脅かすことにもなりかねない......。 伊勢﨑 その一方で、イスラエルを追い詰めすぎるのも危険だと考えています。なぜなら、イスラエルは核保有国のひとつだからです。 ――イスラエルが単独で核兵器を使用する可能性もあるということですか? それはアメリカが許さないのでは? 伊勢﨑 ところが、そのアメリカもアフガニスタンでは核の使用を具体的に検討していた事実があるんです。 これは、NATOの関係者から直接聞いた話ですが、泥沼化したアフガニスタンでの戦いを打開するために、米軍はアフガニスタンだけでなく、サウジアラビアのメッカやメディナへの核攻撃を含んだ、具体的な作戦計画を策定しており、その中には核の使用を正当化するために「温厚なイスラム教徒などは存在せず、危険な存在だ」と訴えるイメージ戦略まで含まれていたそうです。 ――それって、太平洋戦争で広島と長崎に原爆を投下したときにアメリカが使った「ジャップ(日本人)は危険な連中だから、戦争を終わらせるためには核を使うしかない」という論法と同じですね......。 伊勢﨑 そうです。僕が何を言いたいかというと、結局、戦争が長引き泥沼化すると、プーチンやネタニヤフじゃなく、あのアメリカだって80年前に日本に原爆を落としたときとまったく同じような発想に陥ってしまう可能性がある。 だから戦争を長引かせちゃいけない。泥沼化する前に、なんとしても停戦を実現しなきゃいけないんです。 ■国の主権や領土を絶対視すべきでない ――おそらく、私たちが日本から停戦を訴えても、それが停戦の実現につながるのかといえば、実際には難しいような気もします。では、そんな日本で、毎日のように流れてくる戦争のニュースにどう向き合えばよいのでしょう?