【インタビュー】ヤマハがYZF-R9を日本初公開! 「誰でも高性能を味わえるYZF-R1でもR6でもない、新しいスーパースポーツです」
ハードブレーキングにも対応する専用デルタボックスフレーム
MT-09シリーズからの大きな変更は、専用設計のアルミデルタボックスフレーム。これは、MT-09系をベースにスーパースポーツモデルを作るときに、まず手を付けた個所なのだという。 「はじめはMT-09にカウルをつけて、というテストもしたのですが、どうしてもフロント回りの設定が違うんですね。MTは快適に乗れる、動きのいいフロント回りとしていますが、R9はスーパースポーツとして、まずはハードブレーキングに対応できる車体にしたかった。 もちろん、R1やR6とは狙いも違いますから、ヤマハのデルタボックスで最軽量のフレームですね。高剛性としなりを両立する車体設計で、乗りやすさを犠牲にしない、それでも高荷重のライディングにきちんと対応できるフレームとしました」とは、YZF-R9の開発責任者を務めた津谷晃司さん。 ヤマハはR9を「ライディングスキルが伸び盛りなライダーに乗ってほしいモデル」だといった。R1やR6は、レースユースがほぼメインというポジショニングで、R9はそこにスポーツライディングやツーリングにも対応できるユーティリティを持たせたのだという。 同じような狙いのモデルにYZF-R7があるが、R7とはそもそも狙う層が違い、R9はもっと走りを楽しみたい方向に向いているのだ。
レースにも挑戦できる高性能をより手軽な価格で提供したい
さらにこのR9は、2025年からのワールドスーパースポーツ600に出場できることとなり、そのベース車両としても販売するのだという。 「もちろん、R1やR6のように、ほぼそのままサーキットポテンシャルがある、というモデルではありませんが、サーキットラン用のキットパーツも用意して、設計段階からレースのことも考えています。いうなればトラックデイなどでサーキットにR9を持ち込んで、どんどん上手くなると、徐々に物足りなくなってくることもあると思います。 そこでR1やR6にスイッチせずに、R9をモディファイして対応できるような設計ですね。そういったモデルにしていきたいと思っています」(兎田さん) そして津谷さんは、1980年の中盤から1990年ごろのレーサーレプリカブームを振り返る。 「あの頃はどんどん性能を追い求めて、ハイパフォーマンスになった分、一般のライダーを置き去りにしてしまったという面もあったと思います。超高性能だけれど、それはほんのひと握りのライダーしか扱えないような、そんなモデルがたくさんありました。 速いよね、楽しいよね、でもキツいよなぁ、とそれでスーパースポーツから離れてほしくないんです。R9は、ハイパフォーマンスでありながら、それを誰もが味わえる、そんなスーパースポーツにしたい。R1でもR6でもない、新しい方向性のスーパースポーツです」 MT-09系のエンジンを使用しているとはいえ、新設計のデルタボックスフレームや前後サスペンション、ブレーキまわりはR1やR6同等のパーツチョイス。スーパースポーツの動きができる、決して手に負えないパワーではないスーパースポーツを目指しているのだ。 「発売は25年の春ごろ、そうお待たせしなくてもいいと思います。価格もがんばります!いま海外仕様の価格が発表されていますが(注:北米仕様で1万2499ドル=1ドル150円換算で約187万円)、それよりも手ごろな価格にできるように、頑張っています。乗りやすさと同時に手に入れやすさ=価格も大事ですからね」(兎田さん) 誰もが体験しやすい高性能――ヤマハのスーパースポーツづくりが、新しいフェーズに突入したのかもしれない。
YAMAHA YZF-R9欧州仕様主要諸元
・全長×全幅×全高:2070×705×1180mm ・ホイールベース:1420mm ・シート高:830mm ・車重:195kg ・エンジン:水冷4ストローク並列3気筒DOHC4バルブ 890cc ・最高出力:119PS/10000rpm ・最大トルク:9.5kg-m/7000rpm ・燃料タンク容量:14L ・変速機:6段リターン ・ブレーキ:F=Wディスク、R=ディスク ・タイヤ:F=120/70ZR17、R=180/505R17 ・価格:1万2499ドル(北米仕様、約187万円)
中村浩史