西田凌佑 7回KO初防衛 階級卒業前に中谷と統一戦希望 試合3週間前に負傷で心に不安も完勝
◇IBF世界バンタム級タイトルマッチ 西田凌佑―アヌチャイ・ドンスア(2024年12月15日 大阪・住吉スポーツセンター) IBF世界バンタム級王者の西田凌佑が同級14位の挑戦者アヌチャイ・ドンスアを7回1分37秒、KOで下し、初防衛に成功した。減量苦のため現級の活動は今後数戦の見通し。WBC王者の中谷潤人(26=M・T)ら対抗王者との統一戦が期待される。 初防衛は世界を獲るより難しい。ボクシング界で使い古された言葉だ。初防衛に成功した西田は思わぬ形で格言をかみしめた。 「ちょっとパンチをもらい過ぎました。(距離を詰めるため)前へ出る方法、攻め方が雑でした」 試合3週間前にスパーリングで右脇腹を痛めた。骨に異常はないものの「打撲ですかね。触られただけで凄く痛かった」。想定外に早くスパーリングを打ち上げ、距離感をつかむ練習は武市晃輔トレーナーとのミット打ちと軽いマスボクシングのみ。不安を抱えリングに立った。 心理面の不安定はパフォーマンス低下に直結する。相手の変則的な動きを封じるため、攻勢を強めた3回以降は世界ランク2桁の無名選手に右をたびたび当てられた。落ち着きを取り戻したのは5回だ。カウンターの右フックで最初のダウンを奪った。この後はラウンド間のセコンドとの情報交換がようやく開通。ボディーで着実にダメージを与え続け、7回に左ボディーで、挑戦者を仰向けにひっくり返した。 試合後は反省の言葉を並べた。「いつも試合ではスパーでやっていることが出る。今回は(調整終盤に)スパーがなかったのでパンチの強さも調整が利かない。倒さなアカンとは思ってなかったけど無意識に力んでいた」。それでもプロ2度目のKO勝ち。人生で初めて相手に10カウントを聞かせた。アクシデントを克服した経験はきっと糧になる。 勝利後のリングで「中谷選手とやりたい」とWBC王者・中谷潤人の名前を出し、統一戦への希望を語った。計量後のリバウンド量は試合のたびに増加しているという。バンタム級の活動は今後数戦の見通し。現級卒業前にビッグネームと大一番を――。そう望む気持ちはボクサーとして当然だろう。 ◇西田 凌佑(にしだ・りょうすけ)1996年(平8)8月7日生まれ、奈良県香芝市出身の28歳。香芝中では陸上部で長距離に励んだ。王寺工でボクシングを始め、3年時に国体フライ級優勝。近大時代を含めてアマ戦績37勝(10KO)13敗。卒業後は製パン大手に就職するも、退職してプロ転向。19年10月にタイでデビュー。21年4月に元世界王者の比嘉大吾に判定勝ちし、WBOアジア・パシフィック・バンタム級王座を獲得(防衛3)。今年5月にIBF世界同級王者エマヌエル・ロドリゲスに判定勝ちし、世界初挑戦で王座獲得。1メートル70の左ボクサーファイター。 ▼アヌチャイ・ドンスア 西田は背が高くてフィジカルも強かった。スピードも速く、いい選手だった。最後のボディーは効いた。 ▼WBA世界バンタム級王者・堤聖也 (現地観戦し、統一戦について)巡り合わせなので。タイミングが来れば僕は逃げない。