米ISM指数が悪化 景気減速の懸念は現実となるか?
このようにISM以外の製造業指標が9月に改善していたことを踏まえると、ISM製造業の弱さは何らかの特殊要因によって誇張されている可能性があります。グラフをみれば一目瞭然ですが、今回のISM製造業の低下は、他の関連指標の方向感と大きく異なっており、解せない部分があります。 株式市場参加者は弱いISM製造業指数を見て利益確定売りを進めた模様ですが、この見方が正しければ、10月のデータはこの反動で強い結果になり、悲観論が後退する可能性があるでしょう。
非製造業指数の低下を株式市場は好感?
次に非製造業をみてみましょう。3日に発表されたISM非製造業景況指数は52.6で3.8ポイント も低下しました。こちらも事前の市場予想(55.0)を大幅に下振れ、2016 年8月以来の低水準に沈みました。調査項目別では事業活動(61.5→55.2 ※製造業でいうところの生産高)、新規受注(60.3→53.7)がそろって低下したほか、雇用(53.1→50.4)に至っては50 割れに迫りました。ちなみに雇用が最後に50 を割れたのは2010 年半ばですから、リーマンショック後で最も弱かった時期といっても過言ではありません(2011 年9月のハリケーン・アイリーンと2014 年2月の大寒波は特殊要因として除外)。
ただし興味深いことに、この弱いISM非製造業指数を株式市場は好感し、株価は上昇しました。それは取りも直さず、ISM(製・非製)の弱さがFRBに利下げを促すとの見方につながったからです。 3日時点で、金利先物が織り込む10 月のFOMC(米連邦公開市場委員会、29日~30日)の利下げ確率は85.3%へと上昇しました。10 月FOMCでの利下げをめぐっては、ハト派(金融緩和に積極的)で知られるエバンス・シカゴ連銀総裁が「米経済のファンダメンタルズの多くの部分が底堅いことを踏まえれば、製造業がこのところ軟調でも、追加利下げが必要かまだ確信するには至っていない」と述べるなど、FRB内部でコンセンサスになっているわけではありません(発言のインタビューはISM製造業の発表後に実施されたもの)。とはいえ、ISMというメジャーな経済指標がここまで悪化した以上、FOMCに向けて利下げ議論が活発化していくのは間違いないでしょう。 これらを整理すると、(1)ISM製造業指数の弱さは何らかの特殊要因によって誇張されている可能性があるものの、(2)その後に発表されたISM非製造業指数の弱さを踏まえると、(3)FRBが10月のFOMCで追加利下げを実施する可能性がある。(4)FRBの利下げ観測によって下支えされている株価は(5)11月1日に発表される10月のISM製造業が反発すれば、高値を維持、あるいはさらなる上昇が期待できる、といったところでしょうか。
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