米ISM指数が悪化 景気減速の懸念は現実となるか?
ISM(全米供給管理協会)が発表する米国の企業景況感指標が金融市場の関心を集めています。この指標は毎月、製造業と非製造業がそれぞれ発表され、投資家から高い注目を浴びることで知られていますが、10月入り後に発表された9月のISM指数は製造業、非製造業が双方とも大幅に低下したため、今回は特に注目されました。(第一生命経済研究所・藤代宏一主任エコノミスト) 【グラフ】米中貿易戦争で米国も中国も大打撃は受けていない
製造業指数の弱さは特殊要因が誇張?
まずは製造業からみていきましょう。9月のISM製造業景況指数は47.8 へと8月から1.3ポイント 低下し、改善を見込んでいた市場予想(50.0)に反して景気減速への懸念を喚起しました。「50」が好・不況の分岐点とされているこの指標は、8月に41か月ぶりとなる50割れを記録した後、9月は一段と低下。これを受けて2日の米国市場ではNYダウが500ドル近い下落を記録しました。 もっとも、ISM製造業と関連の深い指標は9月に改善し、製造業の景況感が上向きつつあることを示唆しています。FRB(米連邦準備制度理事会)の各地区連銀が地域ごとに調査している製造業指標は、フィラデルフィア(56.6→60.0)が高水準から一段と改善したほか、ニューヨーク(52.0→52.8)、ダラス(52.5→53.6)、カンザスシティ(46.3→48.7)が上向き、低下したのはリッチモンド(51.7→49.5)のみでした。これらを平均した数値は52.9 で、8月の51.8 から改善しています(上昇は2か月連続)。 またISM製造業指数よりサンプル数(調査回答企業)が多く、振れの小さなMarkit社集計のPMI(購買担当者景気指数)は、9月に51.1 へと0.8ポイント 改善しています。調査項目別では、生産高(50.8→51.8)、新規受注(50.5→51.5)、雇用(50.1→50.9)、購買品在庫(48.5→49.5 ※中間財の投入量を示す)、サプライヤー納期(50.3→50.7 ※納期にかかる時間。時間が長いと上昇)が軒並み上昇し、製造業の景況感改善を示す結果でした。こうした底堅さは、景気の冷え込みを示唆するISMと真逆です。