京都の「いけず文化」を体験!?「この先いけずな京町家」が開催、その狙いは?
京都の「いけず文化」を体験できるイベント「この先いけずな京町家」が2025年1月25日(土)と26日(日)、京都市の老舗扇子屋「大西常商店」で開催される。京都人の日常会話で繰り広げられる「いけず」を洛外(京都の市街地の外側)の人でも楽しみながら体験できるイベントだ。実際に京都人と会話する中で建前から本音を読み解くという、ステージクリア型となっている。本イベントについて、担当者に聞いてみた。 【写真】「いけず」を読み解くステージクリア型のイベントとは⁉ ――「この先いけずな京町家」に関して、意図や狙い、ターゲットについて教えてください。 私たちはこれまで「いけず」を扱ったステッカーや人狼ゲームを作ってきましたが、これらはあくまで加工品で「生きたいけず」は体験できません。このイベントではそれを体感してもらうことを目的としています。 もちろん、京都観光で京都人と会話すれば「生きたいけず」を言われている可能性はありますが、私のような洛外の人間だとなかなか気づけませんし、気づけたとしても「怖い」「不愉快」などネガティブな感情になるかもしれません。そこで「いけずが体験できるイベント」を用意することで、洛外の方も「今のはいけずかも…?」と意識的に会話ができ、いけずを言われたとしてもエンタメになっているので楽しむことができます。 そのためターゲットは基本的に洛外の「いけずってどんなものか体験してみたい」という方になりますが、事前テストの段階では生粋の京都人たちも参加し、いけず女将に恐れ慄きながら楽しんでくれていました。京都人の方でも大歓迎です。 ――「いけず文化」をイベントにするのが非常にユニークですが、本イベントやストーリーはどこから着想を得ましたか。 もともとは生粋の京都人であり、今回出演する大西里枝さんが「私もぶぶ漬け出されてみたい」と言っていたことからこのイベントがスタートしました。なぜ京都人なのに?と最初は疑問だったのですが、たしかに大阪人の私でも「おばちゃんに飴ちゃんもらってみたい」という感情はあるし、こういったステレオタイプな県民性を体験すること自体がエンタメとして成立すると思ったんです。 また、秋田県の「なまはげ」のようにもともとは町内や家庭内で行っていた行事も、他府県の方が体験できる場を用意することで立派な観光資源になっています。私たちは「いけずステッカー」と「京都人狼」のころから「いけずを観光資源にする」をテーマに掲げており、今回のイベントが成功すれば京都内で同じようなイベントが生まれ、イケズを体験できる場が増えることで、なまはげ同様に大きな観光資源になる可能性があると考えています。 ストーリーに関しては大西さんを起用することを先に決めていたので「いけずな女将がいる」という設定は初めから決まっていました。そして「なぜ女将はいけずを言うのか?」と言う部分を共同開発者のCHAHANGさんと議論している中で「大西さんもいけず女将として有名になったことで、今まで以上にいけずな振る舞いを強いられているのでは?」という仮説が立ち、そんな設定で大西さんを使ってみようとなりました。実際に大西さんがどうかは知りません。 ――おすすめのポイントやこだわりの点について教えてください。 まずは会場の「大西常商店」が築150年以上の立派な京町家で、この中に入ってお庭や掛け軸、茶室を見ることができる時点で、ほかではなかなか味わえない京都観光です。また「いけず女将」を演じる大西さんは演技経験がないそうですが、普段から接客やご近所付き合いで上手に建前と本音を使い分けてきているせいか、とてもナチュラルに「いけず女将」として振る舞ってくれます。 事前に生粋の京都人、それも40歳以上の男性4名でテストをしてみたのですが、全員大西さんの顔色をビクビク伺いながら「あれはこう言う意味じゃないか…?」「いやそれは考えすぎじゃ…」と四苦八苦していました。演技以上の何かがないと、あんなことにはならなかったと思います。 特にこだわっているのは「いけず」の内容です。参加者がどんな動きをするか完璧に予想はできないので、26種類のバリエーションを用意し、その場で参加者の動きを見ながら大西さんがアドリブで繰り出します。そのため限りなく実際の京都人との会話に近い形で「生きたいけず」が再現できていると思っています。 ――会場を京都市の老舗扇子屋「大西常商店」に選定した理由について教えてください。 空間の面でも「京都らしさ」を体感するために、大西常商店の京町家は申し分ありません。掛け軸やお庭に関する質問をしても、実際に毎日そこで仕事をしている大西さんであれば何でも答えられますし、茶室でおもてなしができるのも魅力的です。 ――読者へのメッセージをお願いします。 イベント公開直後にもかかわらず大変多くの反響をいただいており、とてもうれしいです。チケット予定数は告知当日に完売してしまいましたので、現在追加日程の開催を前向きに検討しています。加えて関東での開催を希望される方もいらっしゃいますので、今回のイベントが成功すれば、こちらもぜひ前向きに検討したいと思っています。 また「マダミスっぽい」「ぶぶ漬け食べたい」というコメントもありますが、このイベントでは誰も亡くなりませんし、ぶぶ漬けを食べる機会もないので、その点だけはあらかじめご了承いただければ幸いです。 ■ストーリー 京都の洛中にある京町家にはとても「いけず」な女将がいるという。彼女はかつて、とても気さくで裏表のない人間だったらしいが、ひょんなことから「いけず女将」として世間で有名になってしまったらしい。世間がもった自分とは全く違うイメージのせいで、彼女は何を言っても本音だと思ってもらえない日が続いた。 そしていつしか自分の本音を全く隠して話すようになり、本当に「いけず」な人になってしまったそう。彼女が信頼するのは、自分の建前から本音を読み取ってくれる人だけ。あなたは彼女が言い放つすべての「いけず」を読み解き、彼女が長いあいだ心の奥底に閉まったままの「建前なき本音」を引き出すことができるだろうか。 ※ストーリーはフィクションであり出演する大西里枝さんとは一切関係がない。 ■イベント内容 参加者は最大4人1組のグループとなり、案内人の指示にしたがって京町家を訪問する。女将の発言が「いけず」だと感じた場合はグループ内で対応を相談でき、うまく本音を汲み取った行動ができれば「ぶぶ漬け」を勧められずに済む。1時間を超えるか、5回目の訪問でぶぶ漬けを勧められてしまうと失格となる。 京町家は「玄関」から「茶室」まで主に4つのエリアに分かれており、「いけず」を読み解くことができればさらに奥のエリアに案内してもらうことができ、最奥の茶室では女将から抹茶と和菓子が振る舞われる。 ■帰宅後も「いけず」を擬似体験できるオリジナルコースター販売 会場ではオリジナルコースター10枚セットを1650円で販売している。表にはイベント内で幾度も聞く「ぶぶ漬けでもどうどすか?」が描かれ、裏にはイベントでも見ることができない女将の本音が描かれている。お茶を出す際に使えば来客にも「いけず文化」を擬似体験させることが可能だ。 ※イベントに参加しない人でもコースターは購入できる。 「いけず文化」はもともと「何百年もお隣さん」という京都の稀有な地域性から、関係性を悪化させず遠回しに意見を伝えるコミュニケーションスキルとして発展したもの。だが、近年では地域のつながりが弱まり「いけず文化」は失われつつある。本イベントではそんな「京都的な日常会話」をゲーム形式で楽しむことができる。この機会に足を運んで、「いけず文化」を味わってみよう。 文=久米碧 ※記事内の価格は特に記載がない場合は税込み表示です。商品・サービスによって軽減税率の対象となり、表示価格と異なる場合があります。